今までの『免疫力と野菜の関係』の中で、免疫システムには、自然免疫と獲得免疫を操る伝達分子が存在しているというお話しをご紹介しました。本日は「自然免疫」に焦点を当ててお話しいたしますね。
ヒトの身体は60兆個の細胞が存在し、それらから私たちの生体は形成されています。細胞は、毎日毎日分裂を繰り返しており、新しい細胞が生まれると同時に、ほぼ同数の古くなった細胞が死んで、体外に排出されているのです。
なんと、24時間で入れ替わる細胞の数は、数千億から1兆個とも!
それだけの数の細胞分裂が行われているので、やはりミスが生じてきます。人間は正確な機密ロボットではありませんからね。また遺伝子の複製中にミスコピーが起きることもあります。ミスコピーで生まれた細胞が「ガン細胞」ということになります。
どんなに健康体であろうと、若年層であろうと、ミスコピーは毎日必ず起きており、1日に5000個から6000個ほどのガン細胞が生まれていると考えられています。60兆個の細胞に対しての数なので、割合としては100億分の1ですが、これらを確実に殺傷しなければ、ガンが進行することになるのです。
毎日毎日、ミスコピーで生まれてしまったガン細胞を殺傷しているのが、免疫細胞ということになります。
一般に検査などで発見されるガンの大きさは約1㎤、重さ約1gが平均的です。この大きさだと、細胞数は約10億個、そこまで成長するのに約10年はかかっていると想定されます。ここまでガン細胞を成長させず、発症前に殺傷するには、体内への侵入を防ぐ、自然免疫の活性化が不可欠なのです。
ここで殺傷しておけば、獲得免疫の活躍前に、生まれたばかりのガン細胞が、体内で増殖することがないからです。自然免疫の一つ”ナチュラルキラー(NK)細胞”はガン化した細胞に極々小さな穴を造って(細孔といいます)、その中にグランザイムと呼ばれる特殊な酵素を注入して殺傷しています。しかし、このNK細胞も加齢と共に、ガン細胞に細孔を形成する力も弱くなり、酵素の効果も薄れていきます。
こうして自然免疫が生まれたばかりのガン細胞を見逃すと、それだけ体内での増殖が速くなり、後に控えている獲得免疫の負担も大きくなるのです。高齢になるとガンの発症率が高くなるのは、こうした自然免疫の低下によるものとも考えられています。
自然免疫系は、四六時中、体を見守っている常設の部隊と考えられます。その最前線とも言えるのが、外気からのバイ菌と常に触れている皮膚や、涙、粘膜などの部位。鼻や口に異物が入ると咳やくしゃみが出ますよね?それも免疫反応の一種なのです。殺菌力のある唾液や胃液、悪い菌を排除する腸内細菌も、常に侵入してくる敵と戦っているのです。さらに自然免疫は、血液やリンパ液の中にも流れていて、全身を巡回し、変異した細胞を破壊する部隊もいます。
健康な女性は肌もキレイだったりしますが、美しくキメの整った肌は、単に美容面だけでなく、外敵であるバイ菌の侵入も防いでいるのですね。
本日は、皮膚をはじめ、鼻や喉、目の粘膜を丈夫にする食材をリストアップしてみます。一見、ガン細胞とは関係がなさそうですが、バイ菌やウイルスがそこで門前払いできれば、自然免疫も安心して働けるでしょう。
- ビタミンACEを揃えて摂る!
ビタミンAとCとE。この3つを揃えて摂ると抗酸化力もUPしますが、皮膚や鼻、喉、目、そして体内の各器官の粘膜を健康に保つ働きが期待できます。1つの食材で3つの栄養素を同時に摂取するのは難しいので、体内でビタミンAに変わるβ-カロテン(にんじん・かぼちゃ・柿・緑黄色野菜)やアスタキサンチン(サーモン・えび・かに)とビタミンCが摂取できる果実類、葉野菜類、そしてビタミンEが摂取できるオリーブオイルやアボカド、ナッツ類などをいただくようにしましょう。
- タンパク質食品 + ビタミンC + 鉄分
この組み合わせは、粘膜を丈夫にするお手伝いをし、皮膚組織にあるコラーゲン生成にも役立ちます。
赤身の肉類には鉄分が含まれると同時にタンパク質食品でもあります。これらに葉野菜たっぷりのサラダをつける、肉料理にレモンをかけるなどしていただきましょう。
魚介類では牡蠣やあさり、うなぎなどに鉄分が含まれ、タンパク質食品でもあります。牡蠣は今が旬の時期なので、春菊や小松菜、ほうれん草などの葉野菜と共に鍋物にしたり、レモンをたっぷりとかけた牡蠣フライにして、いただきましょう。
- ネバネバ食品
里芋、長芋、オクラ、なめこ、もずく、納豆などに含まれるネバネバとした食感の正体はムコ多糖類。粘膜を健康に保つ作用があることで有名です。冬の寒さもこれから厳しくなってきますが、外気の影響を受けやすい、鼻、目、のどの粘膜が菌に侵されると風邪になりやすいので、しっかりといただいておきましょう。
普段の食事から免疫力UPをはかれるよう、外食でも、ご家庭でのお料理でも、組み合わせを工夫して、毎日生まれているガン細胞を確実に殺傷しておきましょう!