今までの『免疫力と野菜の関係』の中で、免疫システムには、自然免疫と獲得免疫を操る伝達分子が存在しているというお話しをご紹介しました。本日は「獲得免疫」に焦点を当ててお話しいたします。
獲得免疫とは、文字通り獲得するものです。どういうことかと言いますと、子どもの頃に、水疱瘡やはしか、おたふく風邪などを経験しておかないと、大人になってから大変になる。というお話を聞いたことがないでしょうか? 一度経験しておくと、隣にはしかにかかっている人がいても、免疫ができてもうはしかにかかりませんよね。これが自ら獲得した免疫力ということになります。
獲得免疫は、たくさんの抗原に出会って、外敵に対する記憶によって強化されていく免疫力なのです。子どもの頃に、ペットを飼っていたり、砂場でよく遊んで育った成人はアレルギーになりにくい、といく研究報告もあります。
また農家で育った子どもに花粉症が少ない、という例もありますね。これは、ペットや家畜、土壌と触れあい、多くの抗原に出会って獲得免疫が鍛えられているからだと考えられているのです。
獲得免疫は胸腺でも鍛えられます。骨髄の中にある造血幹細胞で造られた獲得免疫の一つであるT細胞は、生まれるとすぐに胸腺に集められます。ここでT細胞は数十億の抗原に対応できるよう、殺傷すべき抗原と、殺傷してはならないものの判断力が鍛えられると考えられています。
この時に、その人がどれだけたくさんの種類の抗原と出会ってきたがカギとなるとなるのです!
先述の、子ども時代の例ですね。
しかし胸腺は思春期に最も大きくなりますが、やがて萎縮していき、成人するとなくなってしまう臓器なのです。優秀なT細胞を得ることができるのは二十歳ということになります。獲得免疫は主に二十歳までの生活環境で、その人の免疫力が決まってしまうのですね。
成人になってからは、日頃の生活習慣を改め、前回お話しした自然免疫の活性化に努めるのが、風邪予防、そして生活習慣病やガンへの罹患率を下げることにつながるでしょう。
また子育てをする場合、この獲得免疫の存在を周囲の大人が知っていれば、将来、機能の高い獲得免疫を持つ健康体の成人人口を増やすことにつながり、未来の生活習慣病予防となるかもしれないのです!
しかし、T細胞だけが獲得免疫ではありません。次回お話しする「樹状細胞」という主役級(?)の細胞によって獲得免疫特有の外敵を記憶する機能が発揮されます。
ここまでで、自分には獲得免疫がないのではないか?と心配されている方もいらっしゃるでしょう。しかし、無事成人になっているので、全く持っていない、というわけではないのです。
まずは、外敵が体内に浸入しないようウイルスや食中毒の原因となりそうなものは食べない。肉類や魚介類は加熱をしっかりとする。など、何を食べるか?よりも食べる時の注意点も知っておきましょう。
本日は、食中毒や風邪やインフルエンザなどの予防になる食べ方をご紹介しますね。
香味野菜、ハーブを味方につける!
- 魚介類の場合
忘年会などで、お寿司やお造りなど生魚をいただく機会も多いでしょう。握り寿司にはわさびが必ずついていますが、あれは食中毒予防として理に叶っています。お造りにも必ずわさびを! かつおの叩きなどは生姜がついてきますが、それも生魚についてくる菌を殺菌してくれています。また付け合せのしそや大根のつまも同様の作用があるので、残さずいただきましょう。
ノロウイルスの検出が多い”生牡蠣”はなるべく避け、鍋物や牡蠣フライで。ご自宅で調理する際は、必ず水道水でヒダの部分もよく水洗いしてください。日本の水道水は塩素が含まれるので、消毒作用があります。そして生牡蠣を触った手で、キッチングッズや、他の食材を触らないように!
- 肉類の場合
O157の検出が多いのは牛肉。忘年会やクリスマスディナーで焼肉やステーキ、ローストビーフなど、レアな状態の牛肉を食べる機会も多いと思います。なるべくよく焼くのが好ましいですが、よく焼いたからといって、完全に無菌になるわけではありません。焼肉では唐辛子系、ネギ類、にんにくがついてくるので、必ず一緒にいただくようにしましょう。
ステーキは、にんにくやクレソンなどのハーブがついていますが、それらも殺菌作用があります。ローストビーフには、よくマスタードがついていますね。マスタードも香辛料の一つ。殺菌作用があるので、マストアイテムです。
ベトナム料理やタイ料理にはパクチーやミントなどのハーブも使われていますが、味のアクセントと共に肉類の臭みけしや殺菌作用の意味も込められています。
お寿司のわさびや、ステーキのにんにくは、鼻にツンときたり、食後の口臭を気にして避ける方も少なくないでしょう。しかし、これは嗜好としての食べ方だけでなく、素材の臭み消しや殺菌作用、食中毒予防といった意味もこめられているのです。
香味野菜やハーブなどを食事に取り入れて、免疫細胞が体内で活躍できる環境を整えましょう。