加圧トレーニングなど、しなやかな筋肉をつくるために、「お肉をよく食べるように」とトレーナーから指示されることがあるそうですが、果たして本当なのでしょうか?
また、筋力が衰えてくる高齢者にも、タンパク質食品をしっかりと摂るよう指示されるケースもあるようですね。
こうした国が定めた推奨量以上のタンパク質を摂っても、筋力UPはおろか、ムダに終わることが多いようです。
最新のアメリカの研究報告を見てみましょう。
「高タンパク食=筋力UP」実は科学的根拠がない?
国によって推奨量が微妙に違いますが、だいたいどこの国も、タンパク質食品の1日の推奨量は、全体の食事量の13~20%です。
(炭水化物:50~65%、脂質:20~30%)
しかし、一部の医師やトレーナーがすすめている「高タンパク質食」は、お肉などの摂取を増やし、推奨量よりも多く摂ることが指導されていますね。
アメリカでも、高齢者やアスリートに、高タンパク食をすすめる医師やトレーナーが多く存在するようですが、実は、高タンパク食が筋力UPにつながる、という科学的根拠は世界中でもまだエビデンスが不十分なのだそうです。※参考:『JAMA内科学』
推奨量以上にタンパク質を摂取してもムダに終わる?
こうしてタンパク質を推奨量以上に摂っても、脂肪体重が減ったり、筋力UPや身体機能の向上、といった健康効果は期待できない、ということがアメリカのブリガム・ウイメンズ・ホスピタルの統計調査でわかってきました。
この調査は、高齢男性を対象とし、タンパク質を推奨量より多く摂った場合の、除脂肪体重、筋力、身体機能などの数値の統計をランダム化して比較しました。
その結果が冒頭で述べた通り、どれも向上していなかったのです。
※参考:『JAMA内科学』
高タンパク食は腎臓を痛め、カラダも軟弱に?
タンパク質は3大栄養素の1つなので、炭水化物と脂質と共に、毎日バランスよく摂取する必要がありますが、他の栄養素を減らして、タンパク質食メインにすると、カラダは「高タンパク」状態になり、様々な病気の原因になることがあります。
例えば腎機能の低下などもその1つですね。
タンパク質は『栄養学』の基本的な考え方として、体内では蓄積されずに、余剰分は尿となって排泄される仕組みになっています。
そのため、摂りすぎると尿を造る腎臓に、負担をかけてしまうのです。
慢性化してくると、腎機能が低下して、腎臓病のリスクが高くなります。
そして、タンパク質とともに、カルシウムも一緒に排出されてしまうので、骨ももろくなるのです。
高齢者の場合、タンパク質を摂り過ぎると、筋力UPにならない上に、骨をもろくしてしまうので、骨粗しょう症や骨折などの危険が高まるということになりますね。
具体的なタンパク質摂取量は?
タンパク質の具体的なg数としては、1日当りの平均必要量は成人男性:60g、成人女性:50gとされています。※『日本人の食事摂取基準』より
以下に、タンパク質食品と呼ばれる肉類、魚介類、乳製品、大豆製品などの100g中の実際のタンパク量を明記したので、食材選びの際、お役立てください。
- 肉類(食品100g中)
鶏ムネ肉:24.4g、豚ヒレ肉:22.8g、牛モモ肉(赤身):20.7g - 魚介類(食品100g中:一食分)
マグロ:26.4g、カツオ:25.8g、アジ:20.7g、サンマ:18.5g - その他(食品100g中)
高野豆腐:49.4g、納豆:16.5g、卵(1個60g):7.4g - 乳製品(食品100g中)
プロセスチーズ:22.7g、ヨーグルト:3.6g
さいごに
一般に「タンパク質食品」と言われている食品群は、その食材の重さが、そのままタンパク質量となるわけではありません。
他に脂肪分や炭水化物、水分などでも重さをとっているのです。
細かいことを気にすると、何を食べるべきか迷ってしまいますが、筋力UPのために、炭水化物を抜いて、お肉の摂取量を増やしている人は、「ムダな努力かも?」ということを念頭に置いておきましょう。