栄養の偏りから、サプリメントでビタミンなどの抗酸化物質を補っている方も多いことでしょう。
多くの病気が体内の「酸化」や「活性酸素」によるものなので、『抗酸化物質』と呼ばれる栄養成分は、サプリで補うのが一般的になってきました。
しかし、サプリでは、食事では得られないほどの栄養成分が摂取できてしまうので、「摂りすぎ」による身体ダメージも指摘されています。
アメリカの最新、サプリ研究の詳細を見てみましょう。
抗酸化物質の過剰摂取は心臓ダメージに?
抗酸化物質とは、「ビタミンC」「ビタミンE」といったビタミンの他、「アントシアニン」「カテキン」「アスタキサンチン」といったポリフェノール類が有名ですね。
サプリメントも多く出回っている栄養成分でもあります。
アメリカのアラバマ大学の研究によると、こうした抗酸化物質の過剰摂取は、体内の酸化還元バランスを崩して、心臓にダメージを与えていることがわかってきました。
まだ動物の細胞実験の段階ではありますが、ヒトでも同じことが言えると、警鐘を鳴らしています。
心臓病は酸化ストレスが原因だが……
多くの心臓病は活性酸素に起因する「酸化ストレス」が関与しています。
これは、体内の酸化還元バランスが、酸化に大きく傾いたときに、心臓系の疾患が起こりやすいと、考えられているからです。
そのため、体内を酸化ストレスから守るために、「抗酸化物質」と呼ばれる栄養成分が役立つため、多くのサプリメントが市場に出回るようになりました。
しかし、酸化還元のバランスが、「酸化」とは逆に「還元」に傾く『還元ストレス』はこれまで、さほど研究されてきていなかったのです。
すなわち、サプリメントなどの過剰摂取で、今までとは逆の問題『抗酸化ストレス』を抱えている人が増えているのだそう!
この発見は、心不全の管理において、大変重要な問題かもしれないということです。
動物実験によると……?
そこで研究班は、マウスを用いた実験により、『抗酸化ストレス』が心臓肥大と拡張機能障害を引き起こすことを明らかにしました。
これまで「酸化ストレス」の事ばかりが考慮され、ビタミンやポリフェノールなどの「抗酸化物質」がもてはやされてきましたが、これらの摂り過ぎによる『抗酸化ストレス』もまた、心臓をはじめとする身体には不健全であることがわかったのです。
実験では、「抗酸化タンパク質」や抗酸化物質の一つ「グルタチオン」を含むエサを、マウスに食べさせて経過が観察され、前述のようなことがわかりました。
「抗酸化ストレス」にさらされるとどうなる?
『抗酸化ストレス』を起こしたマウスは、「肥大型心筋症」と呼ばれる病的な心臓変化が観察されました。
また6ヶ月齢(人間の若年層期に相当)のマウスは、心臓の駆出率が異常に高くなり、拡張機能障害も見られたとのこと。
そして、高度の抗酸化ストレスが見られたマウスの60%が18ヶ月齢で死亡したそうです。(マウスの平均寿命は2年のため早死に当たります)
また抗酸化ストレスが低度のマウスは平均寿命まで生存しましたが、15ヶ月齢で、何らかの心臓病を患っていたようです。
サプリメントで栄養摂取を頼っていると危ない?
2019年の調査によると、アメリカ国民の約77%が毎日なんらかのサプリメントを摂取しているとのこと。
そのうちの約58%は「マルチビタミン」の形で抗酸化物質を摂取しています。
そのため、多くの人たちが、知らないうちに『抗酸化ストレス』に陥っている可能性が高いのです。
「抗酸化ストレス」は筋肉も損傷?
研究者たちは、心臓へのダメージだけではなく、筋幹細胞への影響も調査。
筋幹細胞は、老化や糖尿病などの生活習慣病で衰えやすい「骨格筋量」を調整する細胞です。
調査の結果、抗酸化ストレスは、骨格筋量を調整する筋幹細胞の分化を阻害するため、骨格筋量を減少させてしまうこともわかりました。
骨格筋量は逆の「酸化ストレス」でも減少するので、栄養成分の摂取は、バランスが大事ということですね。
※参考:『抗酸化物質と酸化還元信号伝達』
さいごに
「抗酸化物質」はサプリメントなどで、たくさん摂取すべき!
と考えている人が多い中、この研究発表はショッキングですね。
しかし、栄養成分はサプリメントではなく、野菜や果物などを食事から摂取すれば、過剰摂取になるほどの、健康被害は出ないと考えられます。
日頃から、バランスの摂れた食生活を心掛けたいですね。