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江戸川乱歩『十字路』『月と手袋』読書レビューとドリームコーヒーのアイスコーヒー

今週のお題「冷やし◯◯」

おはようございます。
暑い夏のアイスコーヒーは、格別ですね。
今では死語となっていますが、関西圏ではその昔、アイスコーヒーのことを「レイコー」と言っていました。
今でも関西圏の高齢者が使っていますが、レイコーとは、「冷やし(冷製)コーヒー」の略です。
亡き祖父が、東京の飲食店でもレイコーと言っており、通じていました(笑)
飲食関係の方々の間では、「レイコー」=「アイスコーヒー」は、必須用語なのかもしれませんね。

さて、休日土曜日の楽しみの一つに、
西池袋のドリームコーヒーで、お気に入りの窓際席に座って、オーディブルを耳読しながら、原稿を書いたり、調べものをしたりして過ごす、
があります。

ドリームコーヒーは、旧江戸川乱歩邸から徒歩5分のところにあります。
もし、乱歩先生がご存命なら、通っていたのではないかしら?
と思うほど、昭和レトロなお店です。

本日の読書レビューは江戸川乱歩の『十字路』と『月と手袋』です。
どちらも、早く自主しておけば、正当防衛で罪に問われなかったものを、個人的なエゴで事実を隠蔽し、自滅してしまう物語です。

江戸川乱歩『十字路』読書レビュー

時は大正時代。関東大震災前の東京。
ちょうど大正ロマンと呼ばれた優雅な時期なでした。
主人公は、目白の豪邸に住む、40代の実業家。
子供はなく、お見合い結婚した、同年代の妻がいました。
しかし、その妻は、家柄が良いだけで容姿が悪く、夫の愛情がないことを知ると、新興宗教にはまりました。

一方、主人公の実業家は、20代の若い美人秘書と愛人関係でした。
出来心ではなく、真剣です。
若い秘書は、自身の身分をわきまえており、貧しい境遇から、職を得たことに感謝している、心優しい女性でした。
妻になろうという策略はなく、このままで良いと言うのです。

しかし、主人公のほうは、嫉妬深く、陰湿な妻に心底、嫌気をさしており、離婚を切り出していました。
宗教にはまっている妻は、巨額の慰謝料にも関わらず、離婚を拒否。

主人公は毎晩のように、愛人の住むアパートに寄って帰ることを日課としていましたが、ついに、妻が愛人のアパートを突き止め、乗り込んできます。

愛人が風呂に入っている間に、妻が隣人のフリをして、家に上がり込み、押し問答になります。
妻が愛人を殺そうと、風呂場に踏み込んだ時、主人公は、それを止めようと、力づくで押しのけます。しかし、打ち所の悪かった妻は、絶命してしまいました。

ここで、すぐに警察に届けていれば……
大した罪には問われなかったでしょう。
しかし、軌道にのった大手企業の社長という肩書、夢に見た年若い愛人との夫婦生活。
目の前の私欲に目がくらんだ主人公は、妻の遺体遺棄をたくらみます。

同時に、他の物語も動き出します。

主人公とは、何の接点もない、ある美しい女性が結婚問題で悩んでいました。
早くに両親を亡くしたので、年の離れた兄に養われていました。
兄は少々、名の知れた画家。

その女性の婚約者が、兄に結婚の許しを得ようと、行きつけのバーを訪れます。
そこで、兄が暴力をふるい出したので、婚約者は兄を突き飛ばしてしまいました。
兄は、テーブルの角で頭をぶつけましたが、フラフラと立ち上がり、店を出て行ってしまいました。
その後、兄は行方不明となり、妹によって捜索願が出されます。

お話は元に戻り、主人公は、自身が所有するキャデラックのトランクに妻の遺体を乗せて、あるダムの建設予定地に向かっていました。
しかし、都内のある十字路でトラックの衝突事故に巻き込まれます。
車を寄せて、交番で事情を説明している間に、先ほどの、画家がタクシーと間違えて、キャデラックの後部座席に入り、そこで、絶命してしまいました。

主人公は、車に戻ってくると、異変に気付きます。
後部座席には見知らぬ男の遺体。まだ温かいけど、酒臭く、他殺された形跡はありません。
酒の飲み過ぎで脳溢血でも起こして、絶命したと考えられます。
正直に交番に届け出ればよいのに、主人公は、トランクの妻の遺体が気になり、そのままダムの建設予定地に向かいます。

この十字路での事故がなければ、すべて上手くいったのに……。
ここからの、二転三転の物語は、テンポが速く、結末がわかっているのに、どうやってバレていくのだろう???
というスリルが満点です!

ターニングポイントの『十字路』が、そのまま作品タイトルとなっているのも、さすが乱歩先生ですね! 気になる方はぜひ!

※昨日のコーヒーのおともは、ドリームコーヒーの名物《玉子トースト》でした。
オーダーしてから20分かかります。
カリカリのトーストと、アツアツの玉子マヨネーズのハーモニーが絶品ですよ。
家でマネしても、この味はでないのです……。

江戸川乱歩『月と手袋』読書レビュー

時は戦後。日本でも映画製作がさかんになってきたころのお話です。
脚本家の主人公は、とある映画プロデューサーの家に出入りしていました。
そのプロデューサーには、元歌劇団の男役で名を馳せた、美しい女優の妻がいました。

プロデューサーは陰湿な性格で、頭はキレるけど、両親も兄弟もなく、孤独な身の上でした。
貧しい身の上ながら、頭の良さが功を奏で、一代で、映画帝国を築いた野心家でした。
妻も、相手が日本映画の帝王だから結婚したわけで、愛情はありませんでした。

主人公の脚本家は、今でいうイケメンで、プロデューサーの家に出入りしているうちに、女優妻と恋仲になります。

見て見ぬフリしていたプロデューサーは、ある時、嫉妬を爆発させます!
不倫の慰謝料として、当時のお金で500万円を支払えと言うのです。
一映画会社の社員である脚本家に、そんなお金はありません。

分割でいいから、払えと詰め寄るプロデューサーは、凶器を持っています。
正当防衛で、咄嗟に、相手の胸倉をつかむと、容易に、のど元に手をかけることができました。

手を緩めると、凶器が自分に刺さります。
主人公の手は、自然と力が入り、相手の喉ぼとけから異常な音が聞こえ、絶命したのがわかりました。

そこへ、愛人関係の女優妻が部屋に入ってきます。
女優だけあって、事態を冷静に受け止め、2人して、即興でシナリオを組み立て、通り魔事件に仕立て上げました。
その夜は、《とても美しい月夜》でした。
2人のシナリオには、《手袋》という小道具も重要な役割を果たしました。

3ヶ月ほど、何事もなく過ぎましたが、ある日、明智小五郎と仲良しだという警部が訪れ、世間話をしに来るようになります。

この物語には、明智小五郎の名前が出て来るだけで、本人は登場しません。
明智の冴えた頭脳の遠隔操作が、功を奏で……

この物語も、最初から読者に犯人の犯行を披露し、「どうやってバレていくか?」を楽しませてくれる構成です。

フーダニット系の「犯人は誰?」という謎解きミステリーもワクワクしますが、逆パターンの物語も読みごたえがありますね。

この場合、テンポが速くないと、読者が退屈してしまうので、熟練の技が必要です。

さすがは、日本ミステリーの基礎を築いた乱歩先生!

いろいろ勉強になりました。

乱歩邸の近所のコーヒーショップで、このブログを書ける偶然にも感謝いたします。

本日の2作も、オーディブルの『江戸川乱歩全集 第一巻』に収録されています。

第一巻も、あと4~5作で終わりです。
二巻、三巻と続くので、しばらく乱歩世界に浸れそうです。

ありがとうございました。

r.gnavi.co.jp