栄養ミステリー

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釜揚げうどんランチと江戸川乱歩『蟲(むし)』『ペテン師と空気男』読書レビュー

今週のお題「冷やし◯◯」

おはようございます。
昨日のランチは、久しぶりに、釜揚げうどんをいただきました。
グルテンフリーを実践していますが、たまには本場の讃岐うどんが食べたいものですね。
釜揚げうどんは、うどんが温かいのに、麺つゆが冷たいので、ちょうどいい感じでした。

さて、本日の読書レビューは、江戸川乱歩の『蟲(むし)』と『ペテン師と空気男』です。
どちらの作品の主人公も、親や先祖が残したお金で、定職に就かず、趣味に生きた男性の、成れの果てです。
乱歩作品には、よく定職に就かずに、裕福な暮らしをしている男性が登場しますよね。
大正~昭和初期にかけてのブルジョワに、そういう人たちが多く存在したのかもしれませんね。

江戸川乱歩『蟲(むし)』読書レビュー

この作品の主人公は、東京都内の土蔵付き一軒家に住む27歳の独身青年。
先祖が残してくれたお金で、土蔵付きの家を買い、身の回りの世話をしてくれる、住み込みの婆やを雇っていました。
国内外の文学に興味があったので、土蔵の中には、当時は珍しかった海外小説のコレクションも保存されいました。
哲学書や医学書のコレクションもあり、海外の推理小説に出てくる殺害や遺体の死後硬直などの知識も、身に着けていました。

孤独な青年でしたが、1人だけ交流のある学友がおり、彼は丸の内のビジネスマンで、交流も華やかでした。

主人公の青年の容姿は、ごくごく平凡で、パッとしません。
一方の友人は、今でいうイケメンでした。

ある日、友人が恋人を紹介したいと言い出しました。
青年は友人と一緒に、当時話題の新歌劇団の舞台を観に行きました。
友人の恋人は、女優さんだったのです。

舞台の後、3人で食事をします。
青年は、小学校の時の3学年ほど下の美少女であった事実を思い出します。

友人と女優は、青年の純情さや風貌をからかい、バカにするようになります。
青年は、傷つきながらも、女優に惹かれ、報われない恋に悩みます。

そして、友人と女優の逢引きを、ストーカーするようになったのです。
お金に糸目をかけない青年は、二人の逢引き宿の隣に部屋をとり、会話を盗み聞きします。
自分をあざけて、バカにする二人に憤りを感じ、ついに爆発!

青年は、当時はまだ珍しかった、自動車免許を取りにいき、中古のフォード車を手に入れました。
土蔵を改造して、車庫まで作らせる始末です。
また、婆やの目を盗んで、フォード車の後部座席を改造し、人が一人横たわれるぐらいの空間を作ります。

婆やの目に付かないよう、車庫の下にも、大きな穴を掘りました。

ある日、青年は、車で出かけ、婆やが寝静まったあと、帰宅します。
その後、土蔵にこもり、食事もろくにとらないようになりました。

一方で、友人の恋人は、行方不明になります。

しばらくして、婆やが、2日以上、青年が食事に現れないので、不審に思い、立ち入り禁止の土蔵に赴きます。
婆やの力では開かないので、警察に頼んで開いてもらいました。
中は蟲(むし)地獄でした。

青年はどうしたのでしょう?
友人の恋人の女優はどうなったのでしょう?

不気味で、気持ち悪い描写が続くのにも関わらず、展開が早く、怖いもの見たさに読み続けてしまう、大衆小説です。

江戸川乱歩『ペテン師と空気男』読書レビュー

時は、昭和初期。
20代後半の男性が主人公です。
静岡の実家が裕福なので、大学を出てからも定職に就かず、実家からの仕送りで暮らしていました。
アパートで暮らしていましたが、キチンと家賃を払っているので、昼間からブラブラしていても、大家は青年のことを、何も言いませんでした。

読書が趣味で、本で読んだ知識を試して、小さな冒険をするのが趣味でした。
ある日、暇を持て余して、本を片手に上野から電車に乗り、適当なところで、東京へ引き返すつもりでした。

トンネルを抜けると、目の覚めるような美人が、向かいの席に座っていました。
しかし、じろじろ見るわけにはいかず、本に集中していると、いつの間にか、先ほどの美人は消え失せていました。
幻想だったのでしょうか?

青年は、気になったので、その女性を探し始めます。
しかし、またトンネルに差し掛かったので、適当なところで座りました。
すると、今度は、ページが真っ白な本に読みふけっている紳士と出くわしました。
背表紙のタイトルは、金文字で、当時マニアの間で話題になっていたアメリカの犯罪小説でした。
他の乗客も、その紳士の様子が変なので、じろじろと見ています。

やがて、乗客は電車をおりていき、青年は紳士と2人になりました。
青年がまた本に集中して、顔を上げると、先ほどの本は、印字された本に変わっていました。

2人は、いつしか犯罪小説について語るようになり、東京でまた再会する約束を果たします。

しばらくして、青年は、紳士の家を訪ねます。
紳士には、美しい妻がいました。
青年は、その妻が、いつか電車で見た美女だと思い出します。

この不思議な夫婦は何者なのでしょうか?
麻布の立派な洋館に住んでいます。
先祖からの資産で、この屋敷を買ったとのこと。

その紳士は、金持ち仲間と一緒に、倶楽部を作っていました。
欧米の富裕層のマネをして、手品や殺人パーティーなど開いて楽しんでいたのです。

青年もその倶楽部に誘われ、参加するようになりました。
青年は、風貌が地味であったため、夫妻からは「空気男」とあだ名されていました。

次第に、摩訶不思議な出来事と遭遇するようになりますが、全て、金持ちの道楽です。

ついに、本当の殺人事件か? と見紛う事件が起きますが……
警察に通報しても、何の事件も起きておらず、死んだと思った人の遺体も、捜索願も出されていません。

意を決して、青年は倶楽部の人たちと、屋敷を訪れますが、屋敷はもぬけの殻。

青年は、自身の推理を働かせて、紳士が奥方を殺し、行方をくらましたのでは?
と本気で疑います。
やがて、東京でも空襲警報が鳴るようになり、青年は実家の静岡に疎開します。
そこで召集令状が来て、青年は外国部隊で戦うことになりました。

そのうち、終戦となりましたが、戦後はものがなく、帰国できた青年も、戦前のような暮らしはできません。
手に職のない青年は、文学知識があるので、とある三流新聞の記者として就職しました。
三流新聞なので、大衆が喜ぶ、有名人や新興宗教のネタが喜ばれます。
そこで、ある新興宗教の、教祖夫妻の取材を命じられました。
立派な教団の屋敷へ赴くと、そこにいたのは……!?

二作とも、オーディブルの『江戸川乱歩全集 第一巻』に収録されています。

摩訶不思議な世界を、ありがとうございました!