おはようございます。
本日の読書レビューは、アガサ・クリスティーが1923年に書き溜めた、ポワロ物の短編集『ポワロ登場』2巻目です。
イギリスでは、1924年に出版されているようですね。
今回もグーテンベルク21より!
『ポワロ登場』2に収録されている5作品です。
消えた遺言書
ポワロがヘイスティング大尉とアパルトマンで過ごしていたところ、ある勝ち気な若い女性が現れます。
美人でしたが、ヘイスティング大尉は苦手なタイプのご様子……。
その女性からの依頼は、叔父アンドルーからの遺言書を探してほしいとのこと。
アンドルーは、農業で莫大な財産を築きました。
その女性は、両親を早くに亡くしたので、この叔父に引き取られたのです。
アンドルーは古いタイプの人間で、「女に学はいらん!」というタイプ。
しかし、女性は奨学金を受けて、進学に成功しました。
しかし、叔父も年老いて、賢く自立した女性に成長した姪に、「変わった遺言状」を残して病気で亡くなりました。
その内容とは?
- 死後1年間は家と家具は好きにしていい
- その間に姪は、利発で頭の良いことを証明できるだろう
- 1年が過ぎたら、私のほうが頭が良かったことになる。
- 財産は姪に与えず、すべてを慈善団体に寄付する
となっていました。
この賢い姪は、2の自身の知性が試されていることを悟ります。
ポワロは、この女性の遺言状のありかを、つきとめられるのでしょうか?
戦勝舞踏会事件
この短編小説、実は、アガサのポワロものの第2作となるのだそうです。
『ザ・スケッチ』という紙面の1923年3月7日号に掲載された作品です。
第一次世界大戦直後の事件という設定で、なんと、依頼者は、ロンドン警視庁のジャップ警部です!
事件そのものは、新聞報道で、世間にも知られていました。
戦争が終わり、その記念舞踏会は、コロッソス・ホールという優美な会場で開催され、ロンドン中の名士が集まっていたのです。
ヨーロッパ特有の仮面舞踏会で、参加者は、思い思いに変装していました。
そこへ、クロンショー卿が到着。
クロンショー卿は、パーティーのカウントダウンの前にココという、ある有名俳優の妻と口論になったのを目撃されています。
その後、会場の2階でクロンショー卿の遺体が発見されます。
ココという女性が怪しいと思われましたが、別の場所でココも遺体で発見されました。
2人の関係は?
ココの夫が怪しいのでしょうか?
マーキット・ベイジングの謎
出版社によっては、『マーケット・ベイジングの謎』と訳されていますね。
このタイトルは、イギリスの地方の名前(物語上の架空の地)のようです。
ロンドン警視庁のジャップ警部のお誘いで、ポワロとヘイスティング大尉は、マーキット・ベイジングへ休暇で訪れます。
休暇中のジャップ警部は、植物学者のように植物に詳しく、饒舌でした。
しかし、15マイルほど離れた地でヒ素中毒事件が発生します。
田舎町の巡査が、ロンドンの大物刑事、ジャップ警部を見かけて、応援を頼みます。
休暇中だと断りましたが、今度は、ある男の自殺と思われた事件が、発覚します。
それも他殺かもしれない……というのです。
ジャップ警部もポワロも、興味津々の様子。
被害者は世捨て人のような風貌な中年男プロザロー。
不規則な形をしたリー・ハウスという屋敷を借り、一緒に連れてきた家政婦に、身の回りの世話をさせていました。
ある日、プロザローに、ロンドンから夫婦者の来客があり、宿泊していました。
夫妻が、プロザローを呼びに行きますが、部屋は静まり返っていて返事がありません。
ピストル自殺のように思えますが、どうも不自然です。
遺体と対面したポワロは、なぜか、ピストルではなく、遺体の匂いをかぎ、ハンカチに注目していました……
ハンカチから何か匂ったのでしょうか?
ロンドンから来た夫婦者は、プロザローとどんな関係があったのでしょうか?
家政婦とプロザローの関係は?
短編ながら、謎の多い事件です!
呪われた相続
アメリカで女優として活躍していた女性から、ポワロは「我が子を守ってほしい」という依頼を受けます。
元女優の夫は、とある地方の由緒ある家柄でした。科学者を目指していたこともあったそうですが、先祖からの遺産で、家族4人で優雅に暮らしていました。
しかし夫の先祖は、代々、呪われた死を遂げ、夫はつねに怯えていました。
女性は、アメリカ育ちなので、亡霊や霊能者の存在は信じていませんでした。
そんな折、2人息子の長男が、7歳になり寄宿学校に入ったのです。
長男は、大変やんちゃで、寮の窓から蔦をつたって、外に出たり、いろいろと問題を起こします。
数ヶ月が過ぎたころ、長男が、窓から転落する事件が起きました。
長男がいつも利用していた蔦が、途中で切られていたのです。
故意にでしょうか? 偶然でしょうか?
その後、まだ学校に上がっていない次男が、蜂にさされました。
ポワロは、次男の首筋を見て、閃きます。
犯人は、屋敷内にいる。身内か使用人の仕業です。
長男のクセも知っており、蜂が持つ毒素を知っており、人工的に加工する術を知っているものです。
旧家の遺産をわがものにしたい人は、依頼者の夫人なのでしょうか?
潜水艦の設計図
第一次大戦直後の物語なので、イギリス海軍の潜水艦は、注目の的でした。
ポワロが、家にいると速達が届きます。
内容をみると、ポワロは急いで旅支度をはじめ、シャープルズ荘へ向かうと言い出します。
ヘイスティング大尉も同行します。その別荘は、国防大臣アロウェー卿の邸宅でした。
突然、夜更けに大物大臣に呼び出されたポワロ。
大臣の依頼事項なので、もちろん極秘事項でしょう。
さて、邸宅についたポワロに、大臣は、潜水艦の設計図が盗まれたと告げます。
つい3時間前の出来事だとか?
その場にいたのは、秘書や夫人、ハリー卿、そのご子息、社交界の花形コンラッド夫人など。
アロウェー卿は、秘書に会議ですぐ設計図を取り出せるよう、命じていましたが、秘書が取りに行くと、金庫から消えていたのです。
邸宅のフランス窓で、人影を見たと言う証言もあります。
誰の姿だったのか? 外部のものか?
長身であれば、女性も服装次第では、男性にも見えます。
ポワロは、この邸宅にいあわせた客人たち、それぞれの立場を考え、心理学を駆使して、設計図をありかを突き止めます。
その手腕が気になる方は、ぜひ本作を。
さいごに
短編集は、BSのテレビドラマで見ていましたが、実際に読むのは、はじめてでした。
アガサの長編は、ほとんど読破していますが、短編は、かなり読者も頭を使うので、集中して読まないといけませんね。
短編ならではの工夫や、伏線もおもしろいものですね。
ポワロさんと一緒に、こちらまで冒険している気分を味わえました。
ありがとうございました!
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