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珠川こおり2021年 小説現代長編新人賞受賞作『檸檬先生』読書レビュー

おはようございます。
本日の読書レビューは、珠川こおりさんの『檸檬先生』です。
第15回小説現代長編新人賞を受賞した作品で、2021年に刊行されました。
受賞時はまだ19歳!
若い才能と、その完成度に感服しました。

主人公は、19歳の「私」

主人公の「私」は、美大を目指す浪人生。
冒頭では、小学生の時から憧れていた《檸檬先生》と呼んでいた学年が6つ年上の女性の自殺シーンです。
かなりショッキングな冒頭ですが、ミステリーではありません。
「私」が檸檬先生との出会いから、連絡が疎遠になっていく様を描く、切ないストーリーです。
恋愛小説とも違い、なんのジャンルに属するのか? とても不思議な透明感のある小説でした。

檸檬先生とは?

「私」が、小学校3年生の9歳の時に、学校の音楽室で檸檬先生と出会いました。
「私」は、私立の小学校に通っており、檸檬先生は、同じ学校の中学部の3年生でした。
「私」は共感覚という、音や物事が「色」で見えてしまう、特殊な能力(悩み)を持っています。
病気かどうかはわかりませんが、すべてが絵の具のような「色」として見えるので、クラスでは浮いた存在で、いじめにもあっていました。
しかし、ドライな性格で、いじめに付き合っていると、時間を食って面倒なので、無視して、単独行動を続けていました。
面倒なので、学校を辞めたいとも思っていません。

そんな折、授業を抜け出して、音楽室に行くと、檸檬先生がいたのです。

檸檬先生も共感覚

「私」が檸檬先生がピアノで弾いた曲を、色で表現すると、檸檬先生も同じように共感覚だということがわかりました。
「私」は、自分の病気(悩み?)が《共感覚》という名前があることを、初めて知ります。
檸檬先生は、まだ中三なのに、かなり博学で美少女す。そして、瞳に特徴があり、黒目なのに、レモン色に輝いて見えるのです、
そこでまだ少年であった「私」は、檸檬先生というあだ名をつけて、そう呼ぶことにしました。
檸檬先生は、大手化粧品メーカー◎◎堂のお嬢様でしたが、言葉遣いはわざと男言葉を使い、しぐさもサバサバしていました。

夏休みの家で

「私」は、私立の小学校には通っていましたが、実家はとても貧乏でした。
学校から徒歩5分の高級住宅街に住んでいて、築40年ですが、広くて大きな家に住んでいます。だけど、家の中はガランとしており、最小限の家具しかありません。
母親が昼はパートでスーパーのレジ打ち、夜はお化粧をしてお客様のお相手をして、生活費を稼ぎ、家を維持しています。
「私」の学費は、どうやら母方の祖母から出ているようです。
父親は、年に数回だけ帰ってきますが、自称《画家》で、世界を飛び回っていました。
父親の絵は売れておらず、お金持ちの機嫌をとって、世界旅行についていき、旅費もだしてもらっているようです。
家にお金を入れることもなく、母が稼いだお金も、勝手に使っていたりする始末。

母が生活費に困っているので、「私」は、夏休みは家出をすることを決意しました。
「私」が、家に一日中いると、電気代や食費、水道代がかさむからです。
「私」は、一番に檸檬先生の存在を思い出しました。
檸檬先生は、「私」の気持ちを察したのか、電車を乗り継いで、海辺に一人で住んでいる大叔母さんの家に連れて行ってくれます。
母に許可をとって、ひと夏を、檸檬先生と一緒に、大叔母さんの家で、過ごしました。

秋の学園祭

「私」は、学校でのいじめがひどくなり、いつもは気にならないのに、なぜか檸檬先生に会いたくなりました。
中学部の校舎に入り、檸檬先生のクラスの教室に向かいます。
ちょうど、休み時間でしたが、檸檬先生は、掃除用の汚水が入ったバケツの水を、同じクラスの男子生徒にかけられて、いじめにあっている最中でした……。
しかし、臆することなく、平然としている姿に「私」は心を打たれます。
「私」の存在に気付いた檸檬先生は、「どうしたの?」と駆け寄ってきて、2人でまた音楽室に逃げ込みました。
檸檬先生と共同で、学園祭の企画に応募することになり、2人で共感覚アートを作ります。
学園祭では準優勝を果たし、クラスメイトから一目置かれるようになって、いじめはなくなりました。

檸檬先生の受験勉強

学園祭が終わると、檸檬先生は、年明けの高校受験で忙しくなるからといって、「私」を突き放します。

同じ学校に通っていても、小学校と中学部は、校舎が違うので、なかなか会えません。
年が明けて、檸檬先生の中学部の卒業式に逢いに行きました。
「私」は、ずっと憧れていた檸檬先生に、自分の気持ちを打ち明けます。
小学生の気持ちなんて、まじめに受け止めてくれないと思っていましたが、檸檬先生は、「君もそういう目で私を見てたんだね」と言い残し、哀し気にさっていきました。

再会

「私」は6年生になりました。
檸檬先生と逢うことはありませんでした。
しかし、学校の帰りに、クラスメイトと、ドーナツ屋で寄り道をする最中、高校生とおぼしき美少女とすれ違います。
クラスメイトは、あまりの美しさに、ドギマギしますが、「私」は檸檬先生だとわかりました。
中学生の時から、変わっていません。
「大きくなったね」と声を掛けられますが、その後また会うことはありませんでした。

再再会

「私」の父親は、檸檬先生の実家が経営する◎◎堂のアートディレクターとして就職していました。
もちろん、檸檬先生の縁故などではありません。
世界各地を周遊しているうちに、父親のアート感覚が、なぜかお金持ちの目に留まり、◎◎堂のアートディレクターに抜擢されてしまったのです。
不思議な縁を感じながら「私」は高校を卒業し、真剣に難関美大を目指す少年に育っていました。
貧乏だった家計も、父の就職で安定し、母親も今は専業主婦です。
そんなある日、家に電話がかかってきました。檸檬先生です。
会社の名簿を探し回って、「私」の父親の住所をつきとめ、電話してきたようです。
「今から会おう!」
と言われ、スマホの連絡先を交換しました。
「私」は、25歳になった檸檬先生と、どのような再会を果たすのでしょうか?

さいごに

表向きは、とりとめのない、少年の想い出をつづった小説のようです。
しかし、裏のストーリーが巧みに仕込まれていて、時々、怖さや切なさを感じるストーリー展開は圧巻です!
この小説を、まだ10代で書き上げるとは……
私が高校生の時に読んで感動した、フランソワーズ・サガンの『悲しみよこんにちは』を彷彿とさせました。
10代ならではの、新鮮な残酷さ、ミステリーではない怖さが見事に描かれていました。

新しい感覚の小説を世に送り出してくださり、ありがとうございました!
次回作が楽しみな新人作家さんの誕生に心から拍手です♪

 

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