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知念実希人デビュー作『レゾンデートル』読書レビュー

今週のお題「カバンの中身」

おはようございます。
カバンには、いつもKindle専用端末の《Fire》が入っているので、移動中は読み上げ機能やオーディブルの耳読に重宝しています。

さて、本日の読書レビューは、知念実希人さんの『レゾンデートル』です。
知念実希人さんは、現役医師であり小説家なので、医学考証もさることながら、人の心理面の描写も迫力がありますね。

『レゾンデートル』とは?

この作品は、2011年に、『ばらのまち福山ミステリー文学新人賞』を受賞した作品で、選考委員の島田荘司さんを唸らせた筆力!

『レゾンデートル』とは、フランス語で「存在意味」という意味。
プロローグから、展開が早く、ノンストップ・ミステリーと絶賛されるほど、中だるみせずに読める作品でした!

 

末期がん患者である若き男性医師

末期がんを宣告された32歳の医師・岬 雄貴(みさき ゆうき)が主人公です。
自身の末期がんにショックを受け、自暴自棄になっており、コンビニでアルコールを買い込みます。
その時に、池袋をバイクでウロついているチンピラに声をかけられ、殴る蹴るの暴行を受けます。

復讐に燃えた主人公は、アルコールを断ち、身体を鍛えはじめました。

切り裂きジャック

東京周辺では、法律では裁かれていない犯罪者が、喉元を切り裂かれて死亡する、という事件が2ヶ月ぐらいで起こっていました。
遺体のそばには、「J」と書かれたトランプが落ちており、犯行の手口と、19世紀末にロンドンを震撼させた《切り裂きジャック》という実在の犯罪者とを掛け合わせて、犯人像は「ジャック」とあだ名されていました。

主人公とジャック

主人公は、1ヶ月間、身体を鍛えた後、復讐を遂げます。
医師らしく、用意周到でしたが、財布を無くしてしまいます。
また、復讐現場は、目撃者がいました……。
目撃者は、どうやら、世間を震撼させているジャックのようです。
ジャックは、主人公の復讐現場の証拠抹消の見返りに、殺人を要求してきます。生きる望みとなった少女

主人公は、ジャックの条件を飲むべく、行動に出ますが、現場からの帰り、チンピラに絡まれている18歳の少女を助けます。
地方からの家出娘だった少女は、行き場がなく、主人公と暮らすことになります。
歌手を目指しており、学校へ通うためのお金を稼ぎたい一心で、東京に出てきたようです。
主人公は、自分の存在価値を見失っていましたが、この少女によって、自身の存在意味『レゾンデートル』を意識していくようになります。

警察の魔の手

主人公は改心しますが、一度犯した罪は、警察に疑われ始めています。
そして、ジャックからのゆすり(お金ではなく殺人行為)……
しかし、主人公は、ジャックがこぼした言葉にヒントを得て、ジャックの正体を暴くことに、残り数ヶ月の人生をかけることにしました。
ジャックの正体は?

後半の主人公の活動に涙

ここからは、ネタバレになるので、割愛しますが、後半の主人公の活躍は、感動もの!
グロテスクなシーンもありますが、エンタメ小説なのでスルーして、命を懸けて少女を守る姿、頭脳明晰さが映える、ジャックの正体の推理などなど。
物語の展開とは関係ないのですが、最後のほうに、少女が作る《肉じゃが》が、印象的に描かれていました。
他に、主人公の幼馴染であり、学友でもあり、元恋人でもあった女医の心の描写も、必見です!

さいごに

知念実希人さんの小説は、これで3作目ですが、デビュー作でこのクオリティは、天才の域ですね!
爽快なアクションと、物悲しいラストのメリハリも注目です。

摩訶不思議な世界観を、ありがとうございました。

オーディブルの聴き放題プランにも入っているので、ぜひ!