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2020年 ディーリア・オーエンズ『ザリガニの鳴くところ』読書レビュー

おはようございます。
本日の読書レビューは、ディーリア・オーエンズの『ザリガニの鳴くところ』です。
この作品は、日本でも2020年度 このミステリーがすごい!海外部門で2位にランクインした異色ミステリー!
2021年度の本屋大賞(海外版)では堂々の一位!
全米では1,500万部のベストセラーとなり、今年(2022年)11月18日には、日本でも映画が公開されますね。

1969年ノースカロライナ州の湿地で男の死体が発見

物語は、1969年にノースカロライナ州の湿地で、20代後半の男性遺体が発見されたところから始まります。
第一発見者は、地元の小学生の少年2人。
遺体発見現場のすぐそばには、古びた塔があり、そこからの転落死でした。
しかし、『湿地の少女』と呼ばれる22歳のカイアという女性が被疑者となりました。

主人公は一人で湿地で育ったカイア

この物語は、1969年に起こった冒頭の事件と、1952年からの少女時代のカイアの生い立ちが、カットバックで交互に描かれる構成となっています。

カイアは、ノースカロライナ州の湿地で両親と4人兄弟の末っ子として暮らしていました。
父親は第二次世界大戦で片足を負傷しており、一家は戦争負傷者の年金で暮らしていました。
しかし、父親は酒乱で、母親や子供に暴力を振るいます。
ボートを所有しており、気紛れに貝や魚をとって売り、生計を立てていました。

カイヤが6歳の時に父子家庭に

カイヤが6歳になる冬、母親が家を出ていきました。
年の離れた兄と姉が次々と出ていき、5歳上の兄と二人で、父親の暴力に怯える日が続きました。
やがて、すぐ上の兄も、小学校を出ると、出ていきます。
カイヤは小学校に入学する年になっていましたが、街へ出るのが怖く、読み書きもできませんでした。
父親の留守中に、街の保護監査員がカイヤを訪ねて来て、1日だけ学校に行きましたが、いじめにあい、二度と学校には行きませんでした。

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10歳の時に父親が出奔

カイヤは、父の年金から、少しだけお金をもらい、最小限の食料品を買って過ごしていました。
主食はとうもろし粉で、安価で手に入る豚骨と一緒に煮込んで、トウモロコシ粥で育ちました。
カイヤが10歳になった時、母親から手紙が届きます。
父親は酒をやめ、カイヤと一緒に、ボートに乗って漁に出るようになり、少しずつ改善しているように思えました。
しかし、母親の手紙を機に、家を出ていき、二度と戻ってきませんでした。

12歳で文字が読めるように

カイヤはボートを操り、早朝に牡蠣やムール貝をとって売り、生計を立てていました。
そんな中、7歳の時にボート上で言葉を交わした少年が、カイヤに読み書きを教えてくれるようになりました。
その少年は、すぐ上の兄と小学校の時の同級生でした。
幼少のころ、カイヤが兄についてまわる姿も覚えていました。
少年は、読み書きと共に、この湿地に生息する生物や鳥類のことも、カイヤに教えてくれました。
タイトルの『ザリガニの鳴くところ』は、この湿地をあらわしています。
やがて少年は、大学に進学することになり、村を離れます。
カイヤは、独立記念日に帰ってくると約束した青年を待ちますが、現れませんでした。

すれ違いの悲劇

青年は、帰省のたびに、ボートを操って、カイヤが住む小屋の様子をうかがっていました。
自身は生物学者になるので、野生のように育ったカイヤとは、住む世界が違うと感じたのです。
その考えが、間違いだと気づきましたが……
成長したカイヤは、大変な美人になっており、街の有力者の息子と付き合うようになっていました。
しかし、カイヤは遊ばれており、その息子は、同級生だった女性と結婚します。
絶望のカイヤを救いたいと思った青年は、カイヤに拒否され、陰で見守ることに。

1969年の事故

カットバックで描かれていた物語は、後半で1969年のお話に追いつきます。
被害者男性は、かつてカイヤをもてあそんだ、街の有力者の息子でした。
結婚できなかった腹いせに、カイヤが殺害したと思われ、被疑者にされたのです……

カイヤに文字を教えた青年は、生物学者となり、故郷の湿地を研究するため、実家に戻りました。
カイヤとやり直したい一心で、心を閉ざしたカイヤを励まし続けます……
カイヤは、湿地での昆虫採集や、鳥の羽の標本を、青年のすすめで出版することになり、印税で生活できるようになっていました。
今のカイヤは、貧乏ではありません。
しかし、村人たちは、昔の貧しい『湿地の少女』が、犯人だと決めつけます。
真相は……?
遺体にカイヤの指紋も毛髪も、足跡もありませんでした。
カイヤは、このまま身分差別から来る村人の嫌がらせで、殺人犯となるのでしょうか?

70歳で小説家デビュー!著者のディーリア・オーエンズ女史

著者のディーリア・オーエンズは、2019年に、アメリカでこの作品を発表した時点で、70歳だったそうです。
そして、小説家としては、デビュー作!
70歳にして、初の小説が大ベストセラーになるとは、素晴らしい。
それまでは、女性の動物学者として、数々の論文も発表しており、世界的権威のある『ネイチャー』誌に、何度も掲載されたそうです。

動物学者ならではの、自然環境の描写は必見です!
カイヤの心情や、登場人物の心理描写は、年齢を重ねた経験値から来るものでしょう。

映画はリース・ウィザースプーンがプロデュース

この作品の映画化は、かつて『キューティー・ブロンド』などのラブ・コメディ映画で一世を風靡した、リース・ウィザースプーン!
ブロンドの可愛い女優さんでしたが、今は映画プロデューサーとして活躍されていますね。
きっと、原作の世界観はそのままに、親しみやすい映画となっていることでしょう。

www.zarigani-movie.jp

さいごに

カイヤは、無学だと思われていましたが、文字が読めるようになってから非常に博学となりました。
1人で生きてきたので、あらゆる危機管理能力にも優れていました。
終盤は、涙が止まらない、異色ミステリーでした。
真相は、最後の最後にわかります。

恋愛小説でありながら、異空間のナゾめいた世界観は圧巻でした。
ありがとうございました。