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第75回日本推理作家協会賞受賞作『大鞠家殺人事件』芦辺拓 2022年 読書レビュー

おはようございます。
本日の読書レビューは、芦辺拓氏の『大鞠家殺人事件』です。
この作品は、2022年度、第75回日本推理作家協会賞の受賞作!
昭和18年から20年にかけて、大阪船場の商家で起きた連続殺人事件が描かれた大作です。

大阪大空襲前の、古き良き大阪が描かれており、関西出身の私も、楽しく読むことができました。

老舗化粧品会社≪大鞠百薬館≫創業一家

舞台は、昭和18年の大阪船場。
陸軍軍人の娘・中久世美禰子(なかくせみねこ)が、婦人化粧品販売で富を築いた大鞠家の長男に嫁ぐところから始まります。
長男の多一郎は、大阪帝大の医学部を卒業した医師で、大鞠家の跡継は、次男の茂彦でした。
物語は、美禰子の視点で描かれています。
美禰子が嫁いですぐ、夫の多一郎は軍医として、大陸に出征し、美禰子は大鞠家で、夫の帰りを待つことになりました。

大鞠家殺人事件

大鞠家殺人事件

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大鞠家には座敷童が?

大鞠家には、創業者の大鞠万蔵の長男、千太郎がおりましたが、10歳の時に行方不明となりました。
そのため、長女の喜代江は、丁稚奉公で働いていた茂造を婿養子に迎え、子供を4人授かりました。
喜代江と茂造の長男が、美禰子の夫、多一郎になります。
嫁いだばかりの美禰子は、番頭や多一郎の妹から、様々なうわさを聞きます。
中でも、夜になると座敷童が出るというのです。
なんでも、多一郎たち兄弟の伯父にあたる千太郎の怨念かと、思われています。

利発で探偵好きな末妹の文子

多一郎には、月子という二十歳すぎの妹と、出征した茂彦、そして末妹の文子がおりました。
文子はまだ12歳の女学生で、二人の兄と一緒に、幼いころから、探偵小説を読んで育ちました。
多一郎は、医師を目指すため、猛勉強に励んでおりましたが、次男の茂彦は、探偵好きで、まだ貴重であった、アガサ・クリスティーやエラリー・クイーン、クロフツなどの、探偵小説を所持していました。
文子は、特に茂彦と仲が良く、利発な少女として育ちました。

大鞠家で泥棒騒ぎ・殺人騒ぎ

ある日のこと、大鞠家に、軍服を着た男が潜伏しており、泥棒が入ったと、大騒ぎになりました。
幼少から剣道のたしなみがあった美禰子は、敵を見つけると、嫁入り道具の一つとして持ってきた打込み棒で、叩きのめします。
それまで、美禰子に意地悪だった月子は態度を変え、文子は手をたたいて、美禰子の賞賛者になりました。
そして、幾日が過ぎ、長女の月子の遺体(?)が発見されます。
そこで、船場の町医者・浪渕老医師が呼ばれ、助手の研修医、西ナツ子も大鞠家にやってきました。

女学校時代の友人に再会

浪渕老医師によると、月子は赤い絵の具を散らかした部屋に倒れており、わき腹に浅い傷を負って昏睡状態でした。
美禰子が、怖がる文子をなだめていると、懐かしい顔がありました。
美禰子の父親は、大阪に滞在していたこともあり、美禰子は、1年だけ大阪の女学校へ通っていたのです。
その時の同級生で、女医を目指すと言っていた西ナツ子が、その人でした。
2人は、再会を喜びます。
そんな折、喜代江の叫び声が!

大鞠家の主が殺される

月子の殺人騒ぎが冷めやらぬうちに、今度は、本物の殺人事件が起きました。
大鞠家の主、茂造が殺害されていたのです。
月子の騒ぎの少し前までは、家の者が、茂造の姿を見ています。
月子の騒ぎの間に、何者かが、素早く茂造を殺害したのです……

大鞠家殺人事件

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大鞠家の老嬢・多可

大鞠家には、多一郎たち兄妹の祖母にあたる多可が、まだ存命でした。
部屋にこもりっきりで、娘の喜代江が世話をしています。
そんな多可が、義息子の死の知らせを受けて、皆の前に現れます。
何やら、謎めいたことをつぶやきます……

次々と大鞠家の主要人物が亡くなる

戦時中なので、主の茂造の葬式は、質素なものでした。
そんな折、大鞠家の蔵の中から、喜代江の遺体が見つかります。
クロフツの名作『樽』にちなんだのでしょうか?
喜代江の遺体は、蔵の中にあった樽に頭を突っ込む形で発見されました。
日本酒ならぬ、工業用のアルコールが入っていた樽でした。
もしかしたら、出征した次男の茂彦が脱走して、家に舞い戻り、両親を殺害したのでしょうか?
しかし、動機はなんなのでしょうか?
特に家を継ぐことに、不満はないようでしたが……
やがて、重い腰を上げた多可も、部屋で遺体となって発見されます。

探偵が登場!

大鞠家で次々と殺人事件が起きる中、警察の捜査も進まず、ついに方丈小四郎という民間探偵が現れます。
文子は、明智小五郎みたいだと、大喜びして、探偵を迎えます。
この探偵が、事件を解決してくれるのでしょうか?

本当の探偵は美禰子自身?

これ以上書くと、ネタバレになるので、この辺りで留めておきますが、この後、お話は二転三転します。
探偵は、名探偵だったのでしょうか?
個人的には、この物語の探偵は、美禰子だと思いながら、読みました。
意外な犯人でしたが、よく読むと、伏線がいくつかあるので、察しの良い人なら、終盤でわかるかもしれません。
その昔、雲隠れにあった千太郎の消息がカギとなるでしょう。

さいごに

今の時代に、戦時中の大阪を再現した大作!
私もかつて、大阪に勤務していたことがあるので、物語の舞台となった船場や難波の昔の光景はこうだったんだ~と想像しながら楽しめました。
大阪には、今も「橋」とつく地名が多く残っていますが、そんなエピソードも楽しめます。
タイムスリップしたような、世界観を疑似体験させていただき、ありがとうございました!

大鞠家殺人事件

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