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『オリンピックの身代金 』2008年 奥田英朗 読書レビュー

おはようございます。
本日の読書レビューは、奥田英朗氏の著書『オリンピックの身代金 』です。
10年ほど前に、テレビ朝日の二夜連続スペシャルで観た覚えがありましたが、その原作とは、知らずに、手に取りました。
竹野内豊さんと松山ケンイチさんのダブルキャストだったのは、記憶していたので、原作の登場人物も、そのままの想像で読み進められました。
改めて読むと、名作でした。

原作では犯人側の大学院生が主人公

テレビドラマでは、警察側の竹野内豊さんが主演でしたが、原作は、犯人側の島崎国男という東大の大学院生が主人公です。
秋田の貧しい農家の生まれで、7人兄弟の末っ子。
長兄とは、15歳も離れており、国男だけ、家族で一人、出来が良く、子供のころから神童と言われていました。
それもそのはず、国男だけ父親が違ったのです。
母親が、秋田に撮影に来た、映画関係者と惹かれ合い、その時にできた子供でした。

昭和39年東京オリンピック

物語のはじまりは、昭和39年7月。
この小説は、犯人の島崎国男と、国男を思う警察の落合 昌夫、国男の大学時代の同期で、テレビ局勤務の須賀 忠。この3人の視点で描かれています。
冒頭は忠のシーンから始まりますが、物語の大半は、国男が犯行に至るシーンと、昌夫が犯人を特定して追うシーンが、カットバックで描かれていました。
昭和39年7月の東京は、10月10日開催の『東京オリンピック』に向けて、各地で、突貫工事が行われていました。
そんな中、国男の長兄が心臓発作を起こして急逝。
東京に住む国男が、兄の遺骨を引き取りに行きました。

オリンピック関係者や競技予定地で爆破事故

テレビ局勤務の忠の実家は、外苑前。母が旧華族で、その屋敷に一家で住んでいました。
婿養子の父親は、東大出身の警察幹部で、オリンピック警備の総責任者です。
外苑前では、オリンピックの前祝として夏の花火大会が開催されます。
その会場で、忠は、東大経済学部の学友、国男と再会します。
国男は大学院に進学したので、まだワイシャツに黒いズボンという学生服を着用していました。
その後、大きな炸裂音が響き、花火大会が始まりましたが……
なんと、忠の実家の離れが爆破されていたのです。
忠は、ガス漏れによる火災だと聞かされていましたが……。
けが人も死者も出なかったので、新聞には載りませんでした。

その後、中野の警察学校の食堂、まだ開通していないモノレールの橋げたなど、無人の施設が次々と爆破されました。

国男の動機は身代金?

国男は、長兄の死を目の当たりにし、無学で貧しい地方の人々が、東京で日雇いの工事現場で働かざるを得ない状況に心を傷めました。
オリンピックで沸き立つ、国や、一部のお金持ち連中に疑問を持つようになります。
兄の仕事現場に行くまでは、貧困から脱出するには、東大で勉学に励むことで、道が開けると信じていました。
国男がテロリストになり果てていく過程が、丁寧に描かれています。
肉体労働を、自身でも経験しながら、持ち前の知識と知的好奇心で、ダイナマイトの入手先、国立競技場の盲点など、読み進むにつれて、犯行計画が明かされる様子がおもしろい!
国男は、オリンピックを身代金として、警察に脅迫状を送ります。

犯人も警察も、両方応援したくなる小説

一方の、国男を追う、警察側の人間である昌夫のシーンも見逃せません!
昌夫たち警察の追撃を、国男は何度も交わすのですが、国男側の策略が成功すると、一読書として拍手したくなります。
しかし、昌夫側の視点で書かれたシーンでは、今度は、警察側も応援したくなるのです。
これは、奥田英朗氏の筆力によるものなのでしょう。

オリンピックの身代金

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最後に

犯人は、予め読者が知っている前提で描かれているのですが、ラストシーンは、どちらが勝つのか?
もちろん、フィクションなのですが、オリンピック開催に向けて、新聞やTVでは、決して報道されない、大事件があったのかも?
と、まるで実話のように感じる、小説でした。

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最後までお読みいただきありがとうございました!