おはようございます。
本日の読書レビューは、結城真一郎氏の『#真相をお話しします』です。
短編5編が収録されています。
その中の『#拡散希望』は、昨年度の第74回日本推理作家協会賞(短編)を受賞!
SNSを通して、日常に起こりそうな、些細なことが事件へと発展していく様は、「明日は我が身……」と、恐怖感を覚える内容でした!
「惨者面談」
家庭教師の仲介営業マンとして働く東大生が、新百合ヶ丘のある家庭を訪問します。
私立の小学校に通う息子の家庭教師とのことでしたが、インターホーンを押しても、出てきた主婦の様子がおかしいのです……。
昨日まで、切羽詰まった感じで電話をしてきたのに、当日は、約束を忘れていたかの様子……。
成績表も用意しておらず、息子の苦手科目を把握しておらず……
ピアノがあったので、息子にピアノを弾いてみて、とお願いすると、触れるのも嫌! といった面持ちで拒否します。
この母子は、どこか、よそよそしい。本物の親子だろうか?
トイレを借りたいと言うと、公園のトイレを遣えと言う始末……
息子に計算問題を解かせると、どの解答も「110」。
何の暗示なのでしょうか?
「ヤリモク」
夫婦そろって理系大学卒。夫の勤務先は、一流企業。
しかし、一人娘は、占い好きの教養のない女子大生となり、2人ともガッカリ。
娘の持ち物を、それとなく見ると、ブランドものが多い……。
学生のアルバイトで購入できる金額ではありません。
しかし、夫は、妻子に隠して、マッチングアプリでの出会いをやめられない……。
因果応報なのか、娘もパパと同じ遊びを繰り返して、男からお金を巻き上げている様子……
夫は、娘への見せしめに、マッチングアプリ殺人事件をほのめかすが……。
「パンドラ」
子どもができないことに悩む夫妻は、やっと念願の実子に恵まれました。
夫側は、不妊に悩む人たちの助けになれば、と精子提供をしたのですが、
ある日、「あなたの精子提供によって生まれた娘です」と名乗る女性が現れました。
夫は、10数年前に日本を震撼させた連続少女殺人事件の犯人と、顔立ちが似ていると、よく言われていました。
その犯人も、夫も、一流大卒から一流企業へ、エリートコースに乗った人物でした。
犯人に似たがゆえの、悲劇を描くミステリー。
「三角奸計」
学生時代の仲良し3人組は、社会に出ても、リモート飲み会に興じる腐れ縁でした。
しかし、実際に会うことになり、久しぶりの「再会」となりましたが……。
ある者は、結婚して妻子がある身。
ある者は、遠方に婚約者がいる身。
あう者は、独身貴族を謳歌している身。
三人三様の生き方がありましたが、独身貴族の遊び相手の女性の正体は……?
よくありそうな話でありながら、とっても怖い怖いお話でした。
「#拡散希望」
島育ちの仲良し小学生の四人組が展開するユーチューバーへの道!
小学生の人気職種No.1と騒がれただけあり、ある地方の島の子供たちにも、憧れの職業でした。
子供が4人しかいない島で起こる、数々の事件。
一台のiPhoneを巡って、不便な島では、こんな事件に発展するんだ!?
と作者の想像力に感動した一作!
この作品で、結城真一郎氏は、昨年度の第74回日本推理作家協会賞(短編)を受賞しました。
頷ける内容でした!
単行本としての『#真相をお話しします』は、「このミステリーがすごい!」2023年版では、13位にランクイン!
話題作を、オーディブルで聴くことができ、光栄でした!