野菜の中でも特に根菜類に多く含まれている「不溶性食物繊維」の働きは、腸のお掃除をする存在としてよく知られていますね。
しかし、その他にも様々な役割があるので、見ていきましょう。
腸のバリア機能の向上
不溶性食物繊維が、腸をお掃除してくれるカラクリは、便のカサを増して、腸内を刺激して動きをよくすることです。
しかし、その動きは便の排泄だけではなく、物理的な刺激によって、腸の表面を覆っている粘性の物質が増えてバリア機能が増し、病原菌などから腸を守ってくれる免疫物質が増えるのです。
そのため、発熱につながってしまう感染症なども、このバリア機能が働いて、予防してくれるのですね。
そして、前述の「粘性の物質」は腸内細菌の好んで食べるエサにもなりうるので、腸の表面の「腸粘膜」と腸の内部の環境の両方を健康に導く働きが期待できるのです。
不溶性食物繊維は、野菜や果物、海藻、豆類、穀類に含まれており、水分を補うことでカサが増して、バリア機能や整腸作用が高まるそうです。
※参考:『The Journal of Nutrition』2005年10月
他の食物繊維を腸の奥へ運ぶ働きも!
野菜や果物、海藻、豆類、穀類を食べると、不溶性食物繊維だけではなく、水溶性食物繊維の他に、「食物繊維様」と呼ばれるレジスタントスターチ(難消化性デンプン)、レジスタントプロテイン(難消化性タンパク質)、オリゴ糖などの『食物繊維グループ』の成分も一緒に摂取できます。
もちろん食品によって、含有量は違うわけですが、不溶性食物繊維は、他の食物繊維グループの成分たちを、腸の奥へ、奥へと追いやってくれるので、4mはあると考えられている人間の腸内の隅々まで腸内細菌のエサを届け、腸内環境を整えてくれます。
例えば、不溶性食物繊維の多い根菜類ばかり食べていると、他の食物繊維グループの成分が少ないので、かえって便秘になる場合があります。
そのため、穀類や、冷たいご飯などと組み合わせると、食物繊維バランスが整うでしょう。
食物繊維バランスが整う食事例
難しいお話しだけでは、実際どうすればいいのかわからないので、各食物繊維グループの成分が多いメニューや食品をご紹介するので、その中から2つ以上組み合わせてみましょう!
- 不溶性食物繊維
- 金平ごぼう
- 筑前煮
- 肉じゃが
- けんちん汁
- キャロットラペ
- ゴボウサラダ
- ポテトサラダ
など
- 水溶性食物繊維(β-グルカン、ペクチンなど)
- 果物全般
- 大麦類(もち麦、はと麦、押し麦など)
- トマトサラダ
- きゅうりの酢の物
- なすを使った料理
- ゴーヤを使った料理
- レジスタントスターチ
- 冷たいご飯
- 大麦類(もち麦、はと麦、押し麦など)
- 加熱して覚ましたいも類やかぼちゃ料理
- レジスタントプロテイン
- 高野豆腐
- 甘酒
- 豆類を使った料理
- オリゴ糖
- てんさい糖
- きび砂糖
- 加熱したネギ、玉ねぎ類
- とうもろこし
一般に手に入りやすい食材は上記の通りです。
特に、不溶性食物繊維の多い根菜類は、甘辛く煮つけることが多いので、調味料の砂糖とてんさい糖に変えるだけでも、腸内環境が効率よく整えられそうですね。
さいごに
ビタミンやミネラルといった栄養素の他に、近年は食物繊維グループも様々な成分が発見されて、奥が深いですね。
健康維持や不調の要は「腸内環境を整えること」でもあるので、腸の健康にダイレクトに関与する食物繊維の働きは、今後の研究発表が楽しみですね。
栄養バランスの整った食事を摂ることも大切ですが、食物繊維のバランスを整えることも、腸内環境を整えるために必要と言えるでしょう。