私たちの脳には「飲水中枢」という調節機能が備わっていて、私たちに「喉(のど)が乾いた」と感じさせ、水分を補給するよう命じる機能があります。
こうして私たちは、日々、脱水症状から身を守っているわけですが、糖質オフダイエット(ケトン体ダイエット)を実践していたり、アルコール摂取を頻繁に行っている人は、喉の渇きがはやくなることがわかってきました。
FGF21というホルモンが喉の渇きと関係する?
ヒトは、空腹の時に肝臓から「FGF21」というホルモンを分泌させ、このホルモンが、食後高血糖などを抑える働きがあると考えられています。
また、食事法を糖質オフにして、高脂肪・低炭水化物食にすることでもFGF21が産生させることがわかっています。
そしてFGF21は、脳の飲水中枢を刺激して脱水を防止するよう、私たちに、摂水行動を促すよう、働きかけることが、アメリカのテキサス大学の研究でわかってきました。
また同様の現象が、アルコール摂取過多の人にも起こりやすいようです。
摂水行動とは、水分を多く摂るよう促すこと、すなわち、私たちに「喉が乾いた」と感じさせることです。
糖質オフと喉の渇きの関係とは?
テキサス大学の研究では、【A】正常なマウス(肝臓でFGF21を分泌できる)と、【B】FGF21の産生が乏しいマウスを使って、摂水行動を観察しました。
どちらのグループのマウスにも栄養バランスの整った普通食を与えたところ、摂水行動の違いは見られませんでした。
しかし、両グループに、ケトン食(高脂肪・低炭水化物の糖質オフ食)を与えたところ、【A】のマウスたちは水を飲む量が大幅に増えたそうです。
※参考:『細胞代謝作用』
脱水症状を防いだり、生きていくために、一定量の水分補給は必要ですが、糖質オフを実践すると、FGF21のホルモン分泌が過剰になり、必要以上に喉が渇くのかもしれませんね。
糖質オフ(ケトン食)は必要に応じて取り入れよう!
糖質オフはケトン体ダイエットやケトン食、ケトジェニックなど様々な呼び方がありますが、高脂肪・高タンパク食で、炭水化物を徹底的に控えるという食事法です。
もともと、糖尿病や肥満症患者に対して、血糖値上昇を抑える目的で取り入れられるようになりました。
しかし、短期間が体重が減るため、一般に多くの人が取り入れるようになってしまいました。
その結果、治療食を必要としない人たちが実践することで、多くのリバウンドや、機能障害などが世界各地で報告されていますね。
本日ご紹介した論文でも、喉の渇きが早くなることがわかりましたし、糖質オフは長期間実践せずに、目的を決めて、その期間だけ実践するよう心がけましょう。
さいごに
前述の研究は、まだマウスを使った動物実験の段階ですが、マウスと人間の生体構造はとても似ているので、人間にも同様の現象がおきると考えられ、論文発表になっているわけです。
これから暑くなり、脱水症状が気になる季節ではありますが、脳からできるかぎり正確な情報を受け取るためにも、栄養の偏った食事法は控えておきたいですね。