日本でも、運動不足の人口が増えており、問題視されていますね。
運動不足は筋肉の衰えだけではなく、脳の神経系に影響を及ぼし、集中力や認知力の欠如など、脳の老化につながることがわかってきました。
運動不足は脳の神経系に影響?
イタリアのミラノ大学の研究では、まだ動物実験の段階ではありますが、運動不足のマウスの脳の神経経路を調べた結果、脳を活性化させる細胞の成熟が妨げられることがわかりました。
すなわち、運動不足は、集中力や認知力の低下につながるということです。
実験では、マウスの後足を拘束して(前足は自由)、28日間後に、経過を観察しました。
食欲や毛並みなどに関しては、特に異常は見られなかったようですが、脳の「脳室下帯」と呼ばれている脳の領域を調べたところ、自由に動き回って過ごしていたマウスと比べ、その領域の神経幹細胞が70%も減少していたことがわかりました。
「脳室下帯」とは?
脳の「脳室下帯」という領域は、人間も含む哺乳類の動物の脳に備わっており、神経細胞の健康状態を維持する役目があります。
そして、その領域には神経幹細胞も存在しています。
神経幹細胞は、脳の他の神経系と協力しあって、活性化されます。
そのため、運動不足で「脳室下帯」の神経幹細胞の数が減ってしまうと、脳も衰えてしまうことになるのです。
※参考:『神経科学の最前線』
脚の運動がキーとなる?
前述の実験では、28日間、脚を動かさないだけで、神経幹細胞が70%も低下しているので、約1ヶ月で、脳は確実に老化が進むということもわかりましたね。
前述の研究を行った研究者たちは、脚を使った全体重がかかる運動を行うことで、脳に健康な神経細胞を作るための信号を送ることになるので、脳と神経系にとってとても重要なことだと結論付けています。
運動を制限されてしまうと、カラダは新しい神経細胞の生産が困難になるので、ストレスに対処したり、様々な環境変化に適応することも難しくなるかもしれません。
ストレスを感じるのも脳の神経系が関与しますし、やる気や集中力、記憶力なども脳が司っていますよね。
脚を動かす機会を増やすだけで、ストレスから解放されたり、集中力や認知力がUPしたりと、いいことづくめなので、運動習慣は改めて大切だと実感します。
世界一「座りすぎ」の日本人は今後認知症が増えるかも?
この研究では、脚のどの神経や細胞が、脳に影響を与えているかまでは解明されていませんが、マウスでの実験で、脚の動きが減ると、神経幹細胞が確実に減っていることがわかっているので、脚の運動がいかに大切かということがわかりますよね。
マウスは人間の生体構造と非常に似ているので、人間でも同様の現象が起きると考えられています。
(↓ここからは前述の研究報告を読んでの筆者の個人的な意見です)
日本人は、世界一「座りすぎ」の人種といわれているように、仕事はデスクワーク、そしてプライベートではゲームやネットなどで部屋に引きこもるケースがあるので、脚を動かしていません。
このままでは、確実に将来は、脳の認知機能が衰えて、認知症人口が増えてしまうかもしれません。
ほとんどの運動に脚の動きはつきものなので、少しでも歩く機会を増やしたり、階段の上り下り、自転車など、日常の行動でも努めて脚を動かすようにしたいですね。
さいごに
脳は思考やカラダの健康維持など、全ての司令塔のように考えがちですが、その思考も、食事などから得る栄養成分だけでなく、運動習慣も深く関わっていることがわかった研究報告だと感じました。
マラソンやウォーキング、ジム通いなど、本格的な運動ではなくても、ラジオ体操やTV体操など、家の中で数分でできる運動もあるので、脚の運動を少しでも多く、取り入れておきたいですね。