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曽野綾子1974年『虚構の家』読書レビュー

今週のお題「最近おもしろかった本」

おはようございます。
本日の読書レビューは、曽野綾子さんが1974年に発表した『虚構の家』です。
50年ほど前の小説ですが、古臭さはなく、違和感なく読める名作です。

昭和40年代の二人の主婦

物語は、2つの家庭の様子が、カットバック(交互)で描かれています。
ミステリーではないのですが、日常に潜む、人の心理や行動の怖さが描かれていました。
主人公は、二人の主婦。
1人は、老舗ホテルの社長夫人。
もう一人は、大学教授の妻という設定です。
2人の共通点は、お互いの夫が、東大の同期生で、妻の接点は、物語の終盤部です。

テーマ

不登校やDV、モラハラといった、現代の家庭にも多い、共感できるテーマでした。
今でこそ、これらをテーマとした小説が多くなりましたが、昭和40年代では、かなり珍しく、問題作としてベストセラーとなったようです。
まだ、DVやモラハラといった言葉もなかった時代ですね。

幸せすぎる家庭も問題か?

老舗ホテルの社長宅は、中学2年生の長男と、小学5年生の長女がおり、4人家族です。
住み込みの女中がおり、都心の大きな邸宅に住み、夫も鷹揚で夫婦仲も良く、幸せな家庭でした。
しかし、父親がホテル経営者なので、家でもホテル同様、消毒や衛生面が行き届いており、長男が、極度の潔癖症に育ってしまいました。
多感な年ごろになった長男は、私立の中堅の中学に通っていましたが、周りの息遣いや弁当など、全てが不潔と思え、不登校になってしまいます。
終盤で、長男が問題を起こしますが、父親が医者に言われた内容が、印象に残りました。
「お宅は、幸せすぎたため、ご子息が問題を起こすのでは……」
ネタバレになるので、そのあとのセリフは割愛しますが、気になる方は、ぜひ本書をお読みください!

虚構の家

虚構の家

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モラハラ家庭の家政婦のような妻

一方の、大学教授の家庭は、長男が高三で、都立名門校に通っており、東大合格圏の秀才です。
長女は高二で、ミッションスクールに通っていましたが、工事現場で働く誠実な青年と恋に落ち、父親は半狂乱に反対!
この大学教授は、妻を家政婦かわりに思っており、ささいな家事のミスも怒鳴りつけていました。
夫人は、結婚後2年目ぐらいから、不眠症に悩まされ、睡眠薬に頼っていました。
日に日に睡眠薬の量が増えていき、夫と息子の顔色をうかがう日々を送っていました。
息子は、勉強していれば、全てが許されると勘違いして、人情味のかけらもない青年に育っていました。
夫人は、東大に入学できても、ますます人をさげすみ、高慢な人間になるのでは、と心配していますが、言えません。
そのうち、娘は、父親の折檻に耐えられなくなり、駆け落ち同然で、家を出、高校も退学してしまいます。

ラストの結末が悲しすぎる

終盤で、この2つの家庭から、それぞれ死者が出ます。
しかし、死にゆく者への弔いの言葉は……
生きているだけで、苦しい今世だったので、死んだほうが幸せだったのかも……

そう考えることで、残された者が、前向きに生きていこうと思っての言葉なのか?
本当に、毎日が苦しく、逃げ場がなければ、死するほうが幸せなのか?

考えさせるラストでした。

さいごに

「毒親」「モラハラ」「DV」「不登校」といった作品は、2020年代の今では、多く見られますね。
しかし、曽野綾子さんが、こうした社会問題を小説として取り上げた、初期の作家なので、当時(昭和40年代)としては、勇気ある行動だったと思いました。
ある意味、現代小説の礎を築いた作家さんですね。
曽野綾子さんは、まだ91歳でご健在!
作品も多く残しているので、少しずつ、読んでいこうと思う作家さんでした。

ありがとうございました!

 

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