フィンランドで、19年間の追跡調査の結果、先月(2017年4月)『英国栄養学雑誌』でその研究報告が発表されました。
それは食肉たんぱく質の摂取量が多い人ほど、2型糖尿病と診断された患者さんが多いとのこと。何が原因だったのでしょうか?
東部フィンランド大学の研究チームは、1984年から1989年にかけて、42-60歳の男性、2,332名に対して、異なるたんぱく質源の、2型糖尿病に対する影響を検討していました。対象となった男性は、クオピオ虚血性心疾患リスク因子研究のデータを用いて、19年間もの追跡期間中に、432名が2型糖尿病と診断されていたのです。
異なるたんぱく質源とは、
- 植物性たんぱく質
(全粒粉の穀類や野菜から摂れるたんぱく質を含む) - 食肉たんぱく質
- 魚介類
- 卵
- 乳製品
などでしたが、植物性たんぱく質の摂取が多い人は健康的なライフスタイルを過ごしている人が多く、食肉たんぱく質の摂取が多い人よりも2型糖尿病の罹患率が35%も低かったそうです。
また研究チームではコンピュータデモで、食肉たんぱく質5gを、植物性たんぱく質5gに置き換えただけで、2型糖尿病の発症リスクが18%も低くなることを突き止めています。
この研究で調査していた植物性たんぱく質は、全粒粉の穀類や、じゃがいもなど、野菜から摂れるたんぱく質が多く、研究開始時の低めの血糖値と関連しているので、それが2型糖尿病のリスクを低減しているのではないか、と考えられているようです。
しかしこの調査では、食肉たんぱく質の摂取量が多ければ多いほど、発症リスクが高いことがわかったのですが、食肉たんぱく質と2型糖尿病の関連は見られなかったので、食肉に含まれるたんぱく質以外の成分が2型糖尿病を引き起こしている可能性がある、との見方が強まったようです。
また食肉を含む、どの種類のたんぱく質でも(魚介類、卵、乳製品)2型糖尿病の関連は見られず、卵に関してはむしろ、摂取量が多い方が発症リスクが低かったようです。
2型糖尿病の要因として、「食肉のたんぱく質以外の成分が何か?」
までは今後の課題として、研究が進められていくと思いますが、この調査で、こと2型糖尿病が疑わる人は、植物性たんぱく質の摂取を増やし、お肉よりも魚介類や卵から動物性食品を摂取した方がいいのかもしれませんね。
この研究は、フィンランドで行われたものですが、わが国も2型糖尿病患者は増える一方なので、大いに参考になると思います。
日本人のDNAは古来より、農作物と魚介類を食べていたので、お肉の摂取量が多すぎると、カラダに不調を来してしまうかもしれません。しかし、戦後、一般家庭でもお肉を食べるようになってから、日本人の平均寿命は、劇的に増えました。戦後間もない昭和22年の平均寿命は、男性50.06歳、女性53.96歳でした。それが昭和35年には女性の平均寿命は70歳代を突破。男性は昭和46年に70歳代を突破。そして女性は昭和59年(1984年)に80歳代を突破し、男性は2013年に80歳代を突破し(総務省統計局調査結果より)、今や世界有数の長寿国になりました。
それは、伝統的な穀物と野菜、魚介類中心の和食に、お肉が加わったからと考えられています。
「1975年飯」というのが、数年前から密かにブームになっていますが、まだコンビニやデパ地下デリの勢いが少なく、”おうちご飯”が当たり前であった頃の、最も理想的な食事内容です。それは一汁三菜と少しのお肉という、バランスが優れたものでした。
今の日本は平均寿命こそ長くなりましたが、2型糖尿病のような生活習慣病が蔓延し、実際には寝たきりなど、晩年は床に臥せっている人口も多く、健康寿命と平均寿命の差が大きいのも問題となっていますね。
2型糖尿病をはじめ、生活習慣病のリスクが減る、と考えられている、長年の調査でわかった食事内容は、ぜひ取り入れてみましょう。
研究内容にあったように、お肉の摂取が多い人は、それを少しだけでも植物性たんぱく質に変えてみるとストレスなく、摂取量が減らせるかもしれません。
明日は、密かにブームとなりつつある「1975年飯」について触れたいと思います。お楽しみに♪