これから3月にかけて、受験生の方々は、志望校に向けてラストスパートの時期ですね。
夜遅くまでお勉強をしているので小腹がすくと思い、受験生のお子さんに夜食を用意する親御さんも多いことでしょう。
しかし、塩分濃度の高いラーメンなどをご用意していないでしょうか?
もしかして、これが原因で成績が伸び悩んでいるのかもしれません!?
塩分過多で脳に障害が?認知力が低下
世界的権威のある科学雑誌『ネイチャー』の神経科学雑誌に、アメリカ、コーネル大学の最新論文が掲載され、塩分過多の食事は、脳の血流障害が起こることがわかってきました。
これによると脳の血流障害は記憶力や認知力が低下してしまうとのことです。
受験生にとって、記憶力が欠けるのは致命傷ですよね。
また現役の学生さんも、期末テストや、年度末の科目終了試験、社会人では昇進試験などが実地される時期でもあるので、塩分過多の食事は要注意です!
どのように塩分が脳に障害を与える?
具体的にみていきましょう。
コーネル大学の実験では、マウスに通常のエサの16倍も塩分濃度の高い食事を与えたところ、通常食のマウスよりも、脳の血流が20~30%も減少したとのこと。
これにより、認知症に似た症状が現れたのです。
その後、マウスのエサを通常に戻すと、血流と認知機能が改善したので、この実験で塩分過多の食事は脳の血流に悪影響を及ぼしていることがわかりました。
また、研究者たちは、マウスの塩分濃度が高い時に、脳の血管を取り出して培養の様子を観察しています。
通常の脳の状態の血管であれば、「収縮して血流を減少させたり、拡張して血流を増加させる」といった血管の基本的な動作が繰り返されます。
しかし、塩分濃度が高い状態の脳の血管は、刺激を与えても基本的な反応を示さなかったのです。
脳の血管が基本的な動作をやめてしまうと、当然、記憶力や認知力が下がってしまいますよね。
血管の基本的な動作(血管の収縮と拡張)の中でも、特に拡張を促す物質に「酸化窒素」があります。
酸化窒素は「一酸化窒素合成酵素eNOS」という物質によって体内で産生されるのですが、塩分濃度が高い状態だと、この「一酸化窒素合成酵素eNOS」の機能が低下してしまうのが、原因となっていました。※参考:『ネイチャー神経科学』
小難しい物質の名前を覚える必要はありませんが、塩分過多の食事を続けていると、「脳の記憶力や認知力が乏しくなる」ということだけは覚えておきたいですね。
ラーメン1食で1日の目標量を上回るのでご注意!
塩分(ナトリウム)は、カラダに必要なものですが、塩分濃度が高すぎると、前述のように脳だけではなく、高血圧や心臓疾患にも悪影響がでてきます。
高血圧や心臓疾患は血管の病気でもあるので、前述の脳の血管と同じことが他の部位の血管でも見られるのでしょう。
国の食塩の目標量は男性で8.0g未満/日、女性で7.0g未満/日とされています。
これ以上、上回らないのが望ましいのですが、ほとんどの人がこの数値を守れていないのが現状です。
男性のランチや、飲み会の〆、そして受験生の夜食でよく食べられているラーメンは、1食平均10gもの食塩が含まれているという統計が出ていますね。
もちろんお店や食品メーカーによって違いますが、平均値です。
それに、塩分の含まれるものは、ラーメン1食だけに限らず、ファストフードや、外食、お持ち帰りのお惣菜にも多く含まれているので、あっという間に塩分過多となってしまいます。
前述の実験のように16倍も跳ね上がることはないと思いますが、塩分が多すぎてしまうと、脳に与える悪影響の経過はわかりましたね。
塩分過多となった血液を通常に戻すには?
前述の実験で、通常食に戻すと、認知力の低下も改善されたようですが、これにはある程度の日数がかかるでしょう。
マウスの高塩分濃度時の血管の培養実験では、「L-アルギニン」という物質を投与すると認知力が改善されたとの報告もありました。
アルギニンは、アミノ酸の1種で、成長ホルモンの分泌にも深く関わっています。
成長ホルモンは、眠っている間に、あらゆる細胞や体内の器官の修復を行ってくれるホルモンなので、塩分過多の影響を受けた脳の血管も改善に向かうかもしれませんね。
アルギニンは、大豆製品、ごま、くるみ、ピーナッツ、鶏肉などに含まれています。
またアルギニンは体内でグルタミン酸によって合成されるので、かつお出汁やトマトベースのお料理などもいいでしょう。
その際、ビタミンB6も一緒に摂取しておくと、アルギニンの合成に役立ちます。
ビタミンB6はカツオやマグロに多く含まれるので、かつお出汁ならグルタミン酸とビタミンB6の両方が一度に摂れて便利ですね。
さいごに
記憶力や認知力が高まるのは、空腹時とも言われているので、個人的に夜食はあまりオススメしません。
しかしお腹が空きすぎると、はたまた記憶力が低下するので、そんな時は、カツオ出汁ベースのものか、トマトベースの夜食がいいでしょう。そして塩分を必ず控えめにすることです。
受験生や夜食に限らず、ランチ後の午後からの仕事や勉強がはかどらないのは、カラダが消費にエネルギーを費やしていることもありますが、塩分濃度が高くなって、脳の血管の基本動作が機能しにくいことも加わっていそうですね。
塩分過多は、高血圧やメタボ、心臓疾患などの生活習慣病だけではなく、脳にも影響することがわかりました。
受験を控えていなくても、記憶力や認知力はいいにこしたことはありません。
塩分を日頃の食事から控えめにして、快適な脳環境をつくっておきたいですね。
※夜食やラーメンを例に挙げましたが、夜間ということではなく、全体を通して塩分を控えめにしておきましょう。