地中海食も和食と並び、「世界無形文化遺産」に登録されている食事内容で、2010年以後、様々な角度から健康や疾患予防の観点で研究が進められていますね。
そんな中、地中海食は、イギリスの臨床栄養の研究で、骨粗しょう症予防や骨量の維持に役立つことがわかってきました。
高齢者の食事に地中海食を取り入れると!?
イギリスのイーストアングリア大学などの共同研究で、ヨーロッパ各国の高齢者に対して、特別なニーズに対応する食事戦略として、地中海食と骨粗しょう症の関連が調査されました。
研究では65歳から79歳の男女、約1,000名を、
- 【A】地中海食メイン
- 【B】健康的な一般食
と、2つのグループに分けて経過を1年間、観察しました。
【A】のグループは、1年間、全粒粉パスタ、オリーブオイル、ビタミンD3(魚介類やサプリメントで)をメインとした食事が供給され、個別の食事指導も行われました。
【B】の対照群のグループは、健康的な食事内容を記したチラシなどが配布されました。
両グループとも、開始前と1年後の「骨密度」を検査しています。
その結果、両グループとも、骨密度の数値そのものには変化はありませんでした。
しかし……!?
地中海食は骨の損出率を低下
ヒトの骨の量は、二十歳をピークに徐々に減っていくので、骨の量が減らないよう、食事から得た栄養成分などで維持していく必要があります。
前述の研究では、地中海食を取り入れた【A】のグループは、1年後、開始前と骨密度の数値が変わらなかったにも関わらず、大腿骨頸部という骨の損出率が有意に低下していることがわかりました。 ※参考:『米国臨床栄養学雑誌』
大腿骨頸部の骨とは、胴体と脚の間を支える骨、すなわち股関節の骨のことで、高齢者や、寝たきりの方が骨折しやすい部位の骨です。
地中海食を取り入れていると、その部分の骨の損出率が抑えられるので、健康寿命に貢献できることになりそうですね。
地中海食の食事内容を改めてみてみよう!
地中海食とは、イタリア料理やスペイン料理、トルコ料理などをさし、主にオリーブオイルや魚介類、野菜を多く摂るのが特徴です。
今回の研究であがっているビタミンD3は、魚介類からも摂れますが、食事からは十分ではないので、サプリメントを利用したり、日光に当たることでも補えます。
魚介類は骨の材料となるカルシウムも摂れますが、このビタミンD3が、骨の健康維持に大きなポイントを占めているようですね。
さいごに
地中海食を代表するイタリア料理は、パスタを連想する方が多いと思いますが、研究者たちは、未精製の穀類(全粒粉パスタやパン)を推奨しています。
それにプラスして地中海食は、野菜や果物、ナッツ類、オリーブオイル、そして魚介類が占めているので、少々カロリーが高くなったとしても、酸化した油脂類の摂取が少なく、カラダに負担をかけない食材が多いことに気づかされます。
肉類や乳製品、バターなどの飽和脂肪酸も少ないので、高齢者の健康維持だけではなく、バランスのいい食生活の見直しにも役立つでしょう。