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薬丸岳2005年 江戸川乱歩賞受賞作『天使のナイフ』読書レビュー

おはようございます。
本日の読書レビューは、2005年度の江戸川乱歩賞受賞作、薬丸岳氏の『天使のナイフ』です。
この作品は、この年度の乱歩賞予選時から独走しており、満場一致で受賞した名作です。
入り組んだ複雑な人間関係と、未成年者の犯罪という法の壁。
難解な社会問題を、見事にミステリー小説として調和させた力作だと思いました。

主人公の妻が13歳の少年に殺害される

この物語の主人公は、コーヒーショップのオーナー桧山貴志。
大学時代に両親を交通事故で亡くし、保険金で、大学を卒業しました。
満員電車での通勤になじめず、保険金の残りで、アメリカの某人気コーヒーチェーンのフランチャイズに加入し、24歳の若さで、地元、埼玉で小さな店のオーナーになりました。
4年前に、アルバイトで働いていた予備校生と付き合い始め、子どもができたため、結婚。妻はまだ二十歳でしたが、娘の愛美が生後5ヶ月になったある日、自宅で、13歳の少年3人にナイフで何か所も刺されて亡くなりました。
娘は無傷でしたが、妻は、ベビーベットに覆いかぶさり、娘を守るような格好で息絶えていたそうです。

4年後、少年Bがコーヒーショップの近くで殺害される

事件から4年。
マスコミの取材攻撃も収まり、桧山のコーヒーショップも、日常を取り戻していました。
しかし、妻の事件を担当した埼玉県警の二人の刑事が、桧山を訪ねてきます。

コーヒーショップは地元のメイン商店街に面していましたが、路地を入ると、すぐ近くに公園があります。
そこで、桧山の妻を殺した少年の一人Bが刺殺体で発見されたのです。
桧山は仕事と、娘の送り迎えで、いっぱいいっぱいだったので、近所で起きた事件のことなど、知る由もありません。

警察は、桧山が妻の復讐をしたのではないか? と疑っているようです。

桧山は加害者少年のその後を調べる

桧山の元へ、足しげく通ってくるフリーライターがいました。
中年男性で、しつこいのですが、他の雑誌記者のように、あおるような記事は書きません。
真実を追い求めるルポライターといった感じです。
桧山は、適当にあしらいますが、いつも、その男は、桧山にヒントとなる重要な一言を教えてくれます。

桧山は、少年Bがどうして殺害されることになったのか、気になり、妻を殺害した後の足取りを調べることにしました。

法律が改訂され、未成年の犯罪は、世間には公表されませんが、被害者は希望すれば名前を知ることができるようになったのです。

少年Bが収容された少年院をたずね、様子を訪ねます。

その後、少年AとCの足取りも尋ねました。
どうやら、少年Aが主犯格のようです。
少年Cは、勉強のよくできる目立たない少年で、少年Aにそそのかされて、犯行に加わったようでした……

妻の遺品整理

桧山が加害者少年の足取りを調べていくと、少年Cと話すことができました。
何者かに、桧山の妻を殺せと、命じられたと言うのす。
桧山は、看護師を目指して予備校に通っていた妻の様子を思い出します。
よく気が付く、誰からも信頼される女性でした。
若いのに、人生を悟ったような、ものわかりの良すぎる、大人びた様子もありましたが、人に恨みをかような女性には見えませんでした。
桧山は、妻の遺品を整理します。
すると、群馬県の老夫婦と、年賀状のやり取りがあることがわかりました。
義母にたずねても知りませんが、群馬県は、妻が幼少のころ、住んでいたことがあったそうです。

群馬県の老人

桧山は休暇をとって、娘の愛美を連れて、群馬県に向かいます。
まだ四歳の娘は、遠足気分でした。
桧山が、年賀状の住所にあるお宅を訪ねると、年配の男性が一人で暮らしていました。
奥さんは、数年前に他界したようです。

老人の話を聞いていると、娘がおり、ちょうど四歳の時に、裏山で当時中学生だった男子生徒に殺されたようです。
その娘さんと、桧山の妻が同い年で、いつも一緒に遊んでいたそうです。
ある日、桧山の妻が、この老人宅へ泣きながら、入ってきました。
裏山へ行くと、老人の幼い娘は、首を絞められて息絶えていました。

その少年には、腕に痣があり、桧山の妻が、痣のことを思い出したため、犯人が見つかったのです。
しかし、犯人がまだ中学生であったため、当時の老人夫妻は、犯人の名前も、その後の加害者からの謝罪も受けなかったそうです。

桧山は場所を教えてもらい、妻と同い年だった、老人の娘の墓参りをすると……
桧山を追っているフリーライターと出会いました。
フリーライターの年齢から、加害者少年の年には該当しませんが、何か関係があるのでしょうか?

少年Aが殺される

桧山は、少年Aとも連絡がとれ、さいたまアリーナの人込みで会う約束をしました。
しかし、当日、娘の愛美が高熱をだして、保育園へ呼ばれて、行けなくなりました。
すると、その夜、また埼玉県警の刑事から連絡があります。
少年Aがガレージで遺体となって発見されたとのこと。
少年Aの携帯から、桧山の店へ電話した経緯がわかったので、またもや疑われます。
幸いにも、娘の高熱で、救急病院にいたので、アリバイがありました。

保育士の謎

娘が通っている保育園の保育士は、みゆきという24歳の女性で、桧山の亡くなった妻の友人でもありました。
同じ学校ではなく、中学の時の塾の同級生だったということでした。
しかし、他の児童よりも、愛美のことを気にかけているようです。
何か理由があるのでしょうか?
まさか、みゆきが、黒幕なのでしょうか?

少年保護団の弁護士

桧山が少年AやCと連絡を取っていたので、少年保護団体の弁護士が、桧山の店を訪ねてきました。
加害者少年のうち二人は殺害されましたが、残る少年Cも、まだ17歳。
少年法で守られている年齢です。
弁護士は、時々、TVにも出て、熱弁を披露しています。
桧山は、弁護士の立ち居振る舞いを見て、何か違和感を感じます。
それは、何か?
重要なことですが、その時はわかりません。

妻の過去

これ以上書くと、ネタバレになりますが、桧山の妻の過去がわかっていきます。
友達を助けるために、正当防衛で、犯罪を犯していました。
正当防衛でも、相手がの家族にとっては加害者。

妻に恨みを持つものは、その家族だったのでしょうか?

黒幕は意外な人物だった!

物語は二転三転して、クライマックス!
残りページ数も、わずかとなってきたので、黒幕は、そばにいた意外な人だったな~と思っていたら……!
またどんでん返しがあり、最後の最後で、真の黒幕がわかりました。

物悲しい、やるせない余韻があったのですが、コイツが黒幕なら、他の犯罪者も救われるなぁと、安堵した瞬間でした。
小説なので、もちろん作り話なのですが、本当にあった出来事のようで、ニュース記事のその後を追いかけているような読後感でした。

さいごに

コーヒーショップのシーンや、「甘いデニッシュを食事代わりにした」などの記述があり、気付くと、コーヒーを淹れたり、普段はあまり食べないデニッシュを買い込んだりして、読みふけってしまいました(笑)

こういった、読者の行動心理を操ってしまうのも、薬丸岳氏の筆力なのかもしれませんね。

感動作をありがとうございました。

 

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