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鮎川哲也1944年頃『ペトロフ事件』読書レビュー

おはようございます。
本日の読書レビューは、密室ミステリーの巨匠・鮎川哲也のデビュー作『ペトロフ事件』です。
この作品は、鮎川氏が戦前、大連で完成させた初の小説原稿だったそうです。
しかし、日本への引き上げ船の混乱で紛失しました。
記憶を頼りに書き起こし、1949年(昭和24年)、当時のミステリー専門雑誌『宝石』長編小説コンテスト特別賞を受賞しました。

鮎川哲也が生み出した、名探偵は、鬼貫警部ですね。そのシリーズの第一作となります!

戦前の中国《大連》で資産家の高齢ロシア人男性が殺害される

日本の警視庁で警部として活躍していた鬼貫警部は、中国・大連に出向となりました。
現地には、数名の日本人刑事もおり、大連で起きた事件を担当していました。
ある日、大連に在住の富豪イワン・ペトロフというロシア人男性が、書斎で遺体となって発見されます。
大変ケチな高齢男性で生涯独身でした。
実子はいませんでしたが、甥が3人いました。
イワンは、自身の病状を慮って、遺言書を書き換えるため、3人の甥を自宅に招こうとしていました。

甥のアントン・ペトロフ

鬼貫警部が捜査を始めると、大連の高級ホテルに甥の一人アントン・ペトロフが滞在していることがわかります。
アントンは、叔父のイワンに呼ばれて、大連にやってきたようです。
生前のイワンに会っており、アントンが屋敷を去った後に、何者かに銃殺されたようですが……?

アントンの従兄ニコライ&アレクサンドル兄弟

イワンの甥にはニコライ・ペトロフとアレクサンドル・ペトロフという兄弟もいました。
鬼貫警部が、ニコライに会いに行くと、彼はまだ大連の屋敷には行っておらず、当日のアリバイもありました。
弟のアレクサンドルにも会いました。
アレクサンドルには、フィアンセがいたのですが、叔父が人種の違いから結婚を反対していました。
アレクサンドルは、フィアンセと結婚すると、叔父からの遺産を放棄しなければいけません。しかし、アレクサンドルは、フィアンセとの結婚も、叔父の遺産の一部の相続と、両方を希望していました。
殺人の動機としては、十分に成り立ちますが……

イワンの死顔は穏やかだった

銃殺されたイワン・ペトロフは、検死によると、大変穏やかな表情だったそうです。
銃殺の場合、即死なので、打たれる寸前の死者の気持ちが顔に出ます。
恐怖感はなく、まるで微笑んでいるかのような死顔だったとのこと。
資産家で高慢でイワンが、笑顔で接する相手とは、近親者だと想像がつきます。
大変な金持ちでしたが、愛人はいなかったようです。
イワンの書斎には、ココアが入ったカップが2つありました。
ケチな資産家が、客人にココアを振る舞い、銃殺される直前まで笑顔でいられた相手とは?
家族のいなかったイワンにとって、甥っ子3人のうち、誰かお気に入りがいたのでしょうか?
アリバイが一番怪しいのは、最初に会ったアントンですが……

舞台はハルピンへ

鬼貫警部は、アレクサンドルのフィアンセ、ナタリヤにも話を聞きに行きます。
そうこうするうちに、日本から、帰国命令が出て、鬼貫警部は、事件が未解決のまま、大連を去ります。
日本に帰国してしばらくすると、ナタリヤから連絡があります。
ナタリヤから告げられた事実に、急遽、鬼貫警部はハルピンへ向かうことにしました。
しかし、連絡船が難破し、鬼貫警部の到着は遅れました。

さいごに

この作品は、発表当時から、海外の探偵小説を読み込んでいた知識人たちから、「アリバイ崩し」の手法が注目されていました。
鮎川氏も海外のミステリー小説を読み込んでおり、翻訳本では?と訝しがられたというエピソードも残っているそうです。
昭和20年前後に、このレベルの小説を描ける発想は、やはり天才ですね。
日本の巨匠は江戸川乱歩氏と横溝正史氏が、あまりにも有名ですが、鮎川哲也氏の存在も忘れてはいけませんね。

海外ミステリーを彷彿とさせる、スケールの大きな日本ミステリーの礎をありがとうございました!

 

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