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鮎川哲也賞受賞作2009年 相沢 沙呼『午前零時のサンドリヨン』読書レビュー

おはようございます。
本日の読書レビューは、相沢 沙呼氏の『午前零時のサンドリヨン』です。
この作品は、2009年の鮎川哲也賞受賞作!
相沢 沙呼氏は、ドラマ化もされている『城塚翡翠』シリーズでも有名ですね。

コミカルな学園ミステリー

10数年前の、とある男女共学の高校が舞台の学園ドラマで、過去に自殺した女子生徒の霊や、音楽室で起こる紛失事件など、一応「密室トリック」が題材となっています。
『鮎川哲也賞』は、ミステリー系の新人賞の登竜門で、密室トリックが入っていないと、予選通過しにくい(?)という説がある賞ですね。
この物語は、本格ミステリーのような、殺人事件は起きません。
ミステリー要素を期待して読むと、ガッカリするかもしれません。

しかし、青春もの、学園ドラマものとして読むと、かなりおもしろいです!

難関の文学賞のグランプリを射止めただけあって、文体や物語の構成は、デビュー作とは思えないほどの完成度でした!

冴えない男の子が美少女マジシャンに一目ぼれ

物語の主人公は、須川くんという冴えない高校2年生の男の子。
ある日、姉に連れられて、さいたま市内のバーに行くと、クラスメイトの女の子がマジシャンとしてバイトしていました。
須川は、マジシャンの西乃さんに、一目ぼれしてしまいます。
クラスにいる時は、美少女でありながら、目立たないようにしていたため、あまり印象にはなかったのですが、マジシャンとしての美しいトランプ裁きは、プロ級でした。
マジシャンをしている時の西乃さんは、とてもイキイキとしていて、明るい表情でした。

学校の屋上に幽霊が出る?

須川が通う学校の屋上には、昨年自殺した女子生徒の幽霊が出る、といううわさが、まことしやかに流れています。
作曲と得意とし、校内アナウンスのバックミュージックにも作用された美しい音色の音楽も、自殺した女子生徒の作品でした。
音大を目指していましたが、音大を受験するには、過酷で高額な受験用レッスンが必要です。
晴れて音楽に合格できても、4年間で1,000万円ほどの学費がかかるため、女子生徒は、音大進学を諦めたようです。
それを苦にした自殺なのか? 失恋なのか? 家庭環境のせいか?
女子生徒の自殺の原因は、ナゾに包まれたままでした。

www.audible.co.jp

音大志望者の女子生徒がノイローゼぎみ?

自殺した女子生徒は、校舎の最上階にある音楽室から飛び降りており、そこには、グランドピアノがありました。
その音楽室は、普段の授業では使われておらず、音大受験を目指す生徒の、練習場のようになっていました。
須川のクラスにも、音大志望の女子生徒がいましたが、最近、受験レッスンのストレスからか、様子が変です。
自殺した女子生徒の霊が乗り移ったのでしょうか?
そして、音楽室では、音大志望の女子生徒が作曲した楽譜が紛失し、古い机の上には、ナイフで3つの暗号のような文字が記されていました。
そして、そのナイフは、須川が恋焦がれるマジシャン、西乃さんのものでした……

音楽室は密室

この物語は、殺人が起こらないミステリーなのですが、音楽室が密室状態の時に、大切な楽譜紛失事件が起こります。
それと同時に、下級生の女子生徒が大切にしていた高価なハンカチも紛失もします。
極めつけは、西乃さんの所有物であるナイフが使われていたこと……。
西乃さんは、マジックで使うナイフを学校に忘れていたことに気づき、校内で使うことはありません……。
犯人は、ナイフの持ち主の西乃さんなのか?
音大進学をうらやむ、女子生徒の虐めや嫉妬なのか?
自殺した女子生徒の霊が災いしたのか?

さいごに

殺人が起こらないミステリーも、なかなか面白いものですね!
鮎川哲也氏の小説を読み始めたので、『鮎川哲也賞』受賞作も気になって読んでみたのですが、正解でした!
この作品は、オーディブルの読み放題プランに入っているので、気になる方はぜひ!

 

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