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第21回鮎川哲也賞受賞作2011年山田 彩人『眼鏡屋は消えた』読書レビュー

おはようございます。
本日の読書レビューは、2011年刊行、山田 彩人氏の第21回鮎川哲也賞受賞作『眼鏡屋は消えた』です。

男女共学の私立高校の生徒たちが活躍する学園ものの密室トリックミステリーです。

主人公は記憶障害になった女性英語教師

この作品の主人公は、舞台となった学園出身の女教師・藤野。
演劇部の顧問で、8年前に自殺した生徒の遺作『眼鏡屋は消えた』という脚本を、学園祭の演劇で催そうと奔走していました。
準備に追われる中、藤野は、何者かに頭を強打され、8年分の記憶が無くなります。
襲われたのは、放課後で、演劇部の部室の前の廊下でした。

親友とそっくりな演劇部の女子生徒

藤野が起き上がると、制服姿の親友がいました。
しかし、その生徒によると、藤野は英語の教師で、演劇部の顧問。
記憶が飛んでいるので、自身がどうして教師になれたのか、不可解です。
その女子生徒によると、藤野の親友は、8年前に亡くなったとのこと。
なぜ、親友は亡くなったのでしょう。

8年前の同級生に連絡をとる

藤野は、記憶に残っている高校時代の友人に電話します。
すると、藤野の親友は自殺したとのこと。
藤野は自殺の理由が知りたいと思います。
すると、ある級友から、探偵事務所に就職した男子のことをききます。

元級友の私立探偵

藤野が元級友の探偵に連絡をすると、事務所の事務員から、ある路地裏に行くと会えると告げられます。
藤野がその路地に向かうと、猫の鳴き声を真似た、長身のイケメン男性に出くわします。
変質者だと思った藤野は、踵を返そうとしますが、その男が、現在私立探偵をしていたのです。
小説の中の探偵といえば、殺人捜査が主な仕事ですが、現実の世界では、浮気調査や猫探しの依頼が主流です。
元級友も、猫探しを得意としているようでした……。

元級友探偵に親友の死因調査を依頼

元級友探偵は、イケメンではありますが、言うこと成すこと、嫌味たっぷりです。
ですが、的を得た発言で、頭のキレは良さそうでした。
藤野は、この男を雇い、親友の自殺原因を探りだします。
元級友探偵は、藤野が高校の時は、死因調査に消極的だったこと、今、積極的なのは、記憶障害にでもなったのか?
と言い当てます。

『眼鏡屋は消えた』の内容は?

藤野の親友は、『眼鏡屋は消えた』を上演しようとして、反対派に嫌がらせを受けていました。
それを苦にして自殺したのでしょうか?
『眼鏡屋は消えた』は、ある自殺した男子生徒がモデルになっていました。
男子生徒は家族と旅行中、事故に遭い、生き残ったのが、彼だけでした。
犯人は捕まりましたが、数年で刑務所から出てきて、名前を変えて日常生活を送っていたそうです。
男子生徒には、憧れに近い教諭がいましたが、その教諭の正体こそが……?!

高校生が演じるには、衝撃的な問題が多く、また、犯人の減軽の活動に参加していた教師が、学園内におり、事態は複雑化していたのです。

時計台の密室が明かされる

藤野の記憶障害は、まだ治りませんが、藤野の頭を強打した犯人が明かされます。
しかし、その犯人は、藤野の頭を強打しただけで、8年前の犯人ではありませんでした。
藤野の親友は、自殺ではなく他殺だったのか? 事故だったのか?
8年前に遺体が見つかったのは、時計台の前。
当時の時計台は、学園祭前に、演劇の会場になっていましたが、上演が禁止されたため、閉ざされていました。
そのため、密室状態でした。
探偵が、時計台の密室を開設すると……
犯人は、思わぬ人に……

さいごに

犯人がわかったところで、正式には事故扱いになるのですが……
複雑なトリックが入り込んでいて、読みごたえがありました。
学園ミステリーは、似たような話になりがちですが、その中で、10年前には斬新だと思える仕掛けが盛りだくさん!
鮎川哲也賞で予選通過できる作品は、密室トリックが大前提(?)と言われるほど、高次元!
敬遠する書き手が多いため、倍率は、他の文学賞よりも少ないですが、射止めた人のほとんどが、名だたるミステリー作家の仲間入りを果たしていますね。

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