こんにちは。
本日の読書レビューは、桐野夏生さんの『顔に降りかかる雨』です。
この作品は、1993年、第39回 江戸川乱歩賞受賞作!
バブル期のオシャレな雰囲気と、カッコいい女性主人公の活躍が印象的でした。
この作品の登場で、日本にも、女性のハードボイルド小説が誕生した! と当時、話題になったそうですね。
桐野夏生さんは、その後、直木賞作家となり、2015年には紫綬褒章も受賞されていますね。
主人公は探偵の娘、村野ミロ
主人公は、2年前に夫に先立たれた31歳の女性。
大卒で広告代理店に勤務していましたが、フリーランスとして独立。
旦那は、転勤でジャカルタに行きましたが、ついて行きませんでした。
その後、夫は、ジャカルタで自殺……。
そんな暗い過去を持つミロでしたが、父子家庭で育ち、父親は私立探偵業を営んでいました。
父親の事務所兼住まいであった新宿のマンションを譲り受け、そこで暮らしています。
父親は引退して、北海道暮らしを満喫しているようです。
親友の失踪事件に巻き込まれる
物語は、ミロの悪夢から始まります。
目が覚めると、マンションに来客があり、親友、燿子の恋人でした。
その恋人は成瀬といい、中古外車販売業を営んでいました。
バブル期のお話なので、高級外車を売りさばいました。
成瀬は、頭のキレる男で、東大在学中に学生運動で捕まり、ムショ暮らしも経験しています。
そのため、ムショ時代のつながりで、よからぬ連中との交流も……
成瀬の話では、燿子が1億円をもって、姿をくらましたとのこと。
そこで、親友であったミロの家に居候しているのではないか? と疑われたのです。
燿子の死体写真が発見される
成瀬と燿子を探す羽目になったミロは、死体愛好家の川添という老人に会います。
燿子が以前、川添に取材しており、交流があったようです。
その川添の家から、燿子の水浸しの死体写真が発見されたのです。
しかし川添は、売れないモデルや女優を雇って、美しい死体の現場を再現して、写真をコレクションしていたので、写真の中の燿子が、遺体なのか、演技なのかはわかりません。
真相を確かめようとしたところ、川添も自宅で首を釣って死去。
死体愛好家らしく、演出も見事だったようです……
盗み癖のある燿子の秘書
ミロが成瀬に隠れて、燿子の自宅を捜索します。
以前から燿子は、ものを無くすクセがありました。
ミロは、燿子の整理整頓ができない性格のせいだと思っていました。
しかし、燿子の事務所を訪れると、秘書の二十歳の女性がおり、バッグの中からエルメスのスカーフが見えました。
田舎から出てきた発給の女子事務員が、一生懸命節約して買ったのでしょうか?
燿子がプレゼントしたかもしれませんが……
ケチな燿子が、そうするとは思えません
ミロが、燿子の話を反芻すると、取材用のカメラ、シャネルの口紅、エタニティ―の香水。
この秘書は盗癖があるかもしれません。
すると、消えた1億円も……!?
金髪女の存在
この物語には、ナゾの「金髪の女」が出てきます。
日本ではニュースになっていませんでしたが、ドイツで、髪を金髪に染めた東洋人女性が、集団リンチの末、死亡したという事件が起こっていました。
燿子は、ルポライターとして、ドイツへ取材に行き、自身も髪を金髪にして、旧東ドイツの街を闊歩したのだそう……
燿子は、何者かに顰蹙をかい、付け狙われていたのでしょうか?
さいごに
ハードボイルド小説なので、ハデな殺害現場は出てきません。
ナゾがナゾを呼び、静かに、事件が解明されていく様は、お見事!
男女の愛憎劇や、犯人と思われる数人の怪しい人たち。
そして、最後にわかった犯人は、想像と違っていました。
1993年当時にはやった、シャネルなどのハイブランド品、高級外車、麻布に住む、イタリアンレストラン、などなど、バブル期の東京も垣間見れます。
江戸川乱歩賞は、本格ミステリーが条件ではないので、こうしたハードボイルド小説が、受賞作に上がることもしばしば。
バブル期の懐かしさも味わえる、カッコいい女性主人公の活躍は必見です!
非現実的な世界をありがとうございました。