おはようございます。
本日の読書レビューは、2022年の芥川賞受賞作!
高瀬 隼子さんの『おいしいごはんがたべられますように』です。
以前、電車の窓に講談社さんの広告シールが貼ってあるのを見かけて気になっていました。
図書館の順番待ちは100人越えですし、ほとぼりが冷めたら……と思っていたら、オーディブルの聴き放題プランに登場していました!
話題作が、オーディブルの会費内で楽しめるとは、ありがたいですよね。
- 小さな職場の人間関係に親しみが持てた作品!
- ちゃんとしたごはんよりもカップ麺が好きな主人公
- 芦川さんを嫌う同僚の女子社員
- 芦川さんへの嫌がらせが始まる
- 二谷も恋人のお菓子作りにうんざりしていたが……
- さいごに
小さな職場の人間関係に親しみが持てた作品!
この作品は、誰もが体験しうる、職場での小さな人間関係が描かれており、とても共感できました。
あらすじをザっと述べてしまうと、ただの噂話を小説にしたのか?
という印象になってしまいますが、そこが芥川賞作家の筆力で、
「なんとなくムカつく」「ちょっと意地悪したい」「パートさんたちの噂話」が、美しく奏でられているのです。
主人公も登場人物も会社員!
小説の新人賞では、主人公が会社員やOL、主婦はタブーとされていますが、そのありふれた材料が、とてもイキイキとしているのです。
ちゃんとしたごはんよりもカップ麺が好きな主人公
主人公は、二谷という20代後半の会社員。
ある大手企業の地方支店に勤めており、会社近くのマンションで一人暮らし。
仕事が忙しく、残業も多いので、コンビニのカップ麺とおにぎりで、日々暮らしていました。
しかし、芦川さんと呼ばれる、その支店に二谷よりも長く配属されている女子社員と付き合うようになり、「ちゃんとした手作りごはん」を食べるようになります。
芦川さんが語る、野菜や肉・魚を使った、「手作りで健康的なごはん」の価値は、わかりませんでした。
芦川さんを嫌う同僚の女子社員
二谷は、芦川さんと付き合う一方、大学時代にチアリーディング部に所属していた押尾さんという同僚とも仲が良く、よく話していました。
三角関係はなく、気の合う女友達という感じです。
押尾さんは、二谷と芦川さんが付き合っているのを承知で、芦川さんの弱々しさをアピールする存在がムカつく、などと悪口を言っています。
芦川さんは、頭痛もちで、それを理由によく会社を早退していました。
そして、翌日は早退のお詫びにと、手作りのお菓子を、会社で配るようになりました。
頭痛で早退して、家でお菓子作りが許されるのか?
支店長をはじめ、プロ級のお菓子にごまかされて、芦川さんの勤務態度は認められていました。
芦川さんへの嫌がらせが始まる
芦川さんは、会社で褒められるのが嬉しいのか?
早退しなくても、平日に帰宅してお菓子を作っては、会社で配るようになりました。
中には、甘いものが嫌いな人もおり、うんざりする人たちも出てきました。
やがて、配られたケーキをビニールに入れてぐちゃぐちゃにして芦川さんの机に置くという嫌がらせが始まりました。
しかし、大手企業の組織は、「弱い者を守る」ことを優先し、犯人をつきとめて、退職に追いやってしまいました。
二谷も恋人のお菓子作りにうんざりしていたが……
芦川さんへの嫌がらせをした犯人の退職と同時に、二谷は、千葉の支店に転勤が決まりました。
犯人は、送別会を辞退し、二谷は支店の仲間との送別会に向かいます。
そこで用意されていたものは、恋人の芦川さんが、お店の許可をとって、手作りのホールケーキを、最後にプレゼントするというもの。
そこで、二谷は何を思ったのでしょうか???
さいごに
職場の人間関係、手作りごはん、手作りお菓子、親切の押し売りにムカつきを覚える人たちと、弱者を守る組織。
どこにでもありそうなお話なのに、未知の世界に足を踏み入れたような読後感があり、こんな小説もあるのか! という感嘆が楽しめました。
新しいスタイルの小説を、ありがとうございました。