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『漱石と倫敦ミイラ殺人事件』島田荘司1984年 読書レビュー

おはようございます。
本日の読書レビューは、島田荘司さんの初期の頃の作品『漱石と倫敦ミイラ殺人事件』です。
オーディブルの聴き放題プランで見つけたので、最近の作品だと思っていましたが、
なんと! 1984年に発表された作品でした。
日本が誇る夏目漱石のロンドン留学中のエピソードと、架空の人物であるシャーロック・ホームズが、一緒にミイラ事件を解決するという物語です。

夏目漱石はベーカー街221Bの近所に下宿?!

物語は、明治35年。
夏目漱石が国費で、シェイクスピア研究のため、ロンドンに滞在していた頃。
2年間の留学期間でしたが、漱石は、下宿を転々としていました。
最後の下宿は、コナン・ドイルの名作『シャーロック・ホームズ』が住む、≪ベーカー街221B≫のすぐ近所であったことから、この物語が生まれたそうです。
漱石が生きた時代は、かのシャーロック・ホームズの時代であったのです。
お話の中では、漱石はまだ二十歳の若い青年。
シャーロック・ホームズと、ワトソン医師は40代という設定です。

下宿で亡霊の声に悩まされる漱石

漱石は、シェイクスピア研究のため、クレイグ先生という50代後半の権威ある教授に教えを乞うていました。
漱石の下宿代は、国費で賄われていましたが、ロンドンは物価が高く、当然、家賃も高く、安い下宿をめぐって、転々とする羽目になりました。
ようやく予算内の下宿が見つかると、今度は亡霊の声に悩まされます。
毎晩「黄色いアジア人は、出ていけ」という内容です。
当時のヨーロッパでは、黄色人種のアジア人は、災いをもたらす者だと軽蔑されていました。
アジア人は皆、同じに見えるらしく、中国人も日本人も区別がありません。
また、日本は、中国の一部だと思われている始末……。
下宿のおかみさんに、亡霊のことを相談すると、シャーロック・ホームズに相談に行けと言われます。

漱石とシャーロック・ホームズの対面

漱石がホームズの住む≪ベーカー街221B≫を訪れると、二人の男が家の中にいました。
教養もあり、どっしりとした物腰のワトソン医師のほうをホームズだと思った漱石は、琴の成り行きを、訛りのある英語で話します。
すると、落ち着きのないほうの、ひょろりとした長身の男が口をはさみます。
実は、気違いじみたほうの男性こそが、シャーロック・ホームズだったのです。

ホームズは、今夜から亡霊は出ない、その代わりにある事件を手伝えと持ち掛けてきます。

ロンドン郊外のお屋敷

ホームズとワトソンは、漱石が訪ねてくる数日前に、ロンドン郊外に住む、ある富豪の未亡人から依頼を受けていました。
子供の頃、生き別れた弟が見つかり、屋敷に呼び寄せて一緒に住むことになったそうです。
しかし、夫人は、弟の大切な中国の舶来の箱を開けてしまったのです。
弟は、貧しさのあまり、中国での行商に携わっており、そこで悲惨な目に遭遇していました。
呪いを消すために、舶来の箱をある僧侶からもらい、「箱を開けると、閉じ込められた呪いが出てくるから、絶対に開けてはいけない」と言われていたのです。
姉が明けてしまったために、弟は、呪いにかかって、何も食べず、廃人のように成り果てたのです。

ミイラの遺体

漱石は、ホームズとワトソンと一緒に、夫人の屋敷を訪れることになりました。
しかし、時すでに遅し……
夫人の弟は、ミイラ遺体となって、発見され、美しい夫人は、発狂して精神病院へ連れていかれるところでした。
やせ細っていたとはいえ、前夜まで動き回っていた人間が、一夜でミイラになるのでしょうか?
弟の部屋は、おまじないのためか、燻製の匂いがしており、常に煙っぽかったのです。
ワトソン医師は、人間を燻製にしたとしても、一夜でミイラ化はありえないと話します。
漱石は、ホームズから、東洋に伝わる呪いなどを質問されます。

漱石の思い付きが事件を解決

ミイラ死体の喉の奥から、「常66」と書かれたメモ書きが見つかります。
遺体の男の死因は、餓死ということだったので、お腹が空いて紙を食べたのでしょうか?
そして、この弟は、本当に夫人の弟だったのでしょうか?
夫人の弟は、おそろいのロケット・ペンダントを持っており、中には小さな家族写真が入っていました。
夫人は、やせ衰えた弟を、このペンダントで判断したので、間違っていたのではないでしょうか?
亡くなった夫人の夫には、外国へ行った兄がいます。
兄が弟の財産を狙っていたとしたら……?

漱石は思い付きをホームズやワトソンに話すと……
やがて、ホームズは、それをヒントに事件が解決しました。

さいごに

漱石が、どんなヒントをホームズに与えたのか?
気になる方は、ぜひチェックしてみてくださいね。
それにしても、漱石とシャーロック・ホームズが、同時代に生きていたことに気づくとは……。
島田荘司氏の着想に脱帽です。
島田氏の初期のころの作品ですが、やはり大作家になる方は、素地が違うんだなぁと思った次第です。
ありがとうございました!