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『優しい死神の飼い方』知念実希人2016年 読書レビュー

おはようございます。
本日の読書レビューは、知念実希人氏が2016年に刊行した『優しい死神の飼い方』です。
マンガ版も人気のようですが、オーディブルで光文社刊のものを、聴きしました。
知念実希人氏の作品は、今年に入ってから発見した作家さんですが、『ガラスの塔の殺人』、そしてデビュー作の『レゾンデートル』の筆力のすごさに感動して、読破したい作家の一人となりました。
この作品は、ファンタジーと医療ミステリー、死生観などが、ギュッと詰まった一冊!
時折、切なさも合わせを持つ、五感をしびれさせる作品でした。

主人公は犬に扮した死神

物語の語り手は、主人公である犬に扮した死神。
天空で、上司からの命令で、地球上の21世紀の日本を担当するよう、仰せつかり、ゴールデンリトリバーのオス犬に姿を変えられました。
ある寒い夜のことで、この死神の最初の試練は、凍えそうな寒さに耐えることでした。
そこに、二十歳ぐらいの美しい娘が通りがかり、捨て犬だと思われて、飼われることになりました。
付いて行った先は、昭和初期の洋館を改造したホスピスという病院でした。
ホスピスは、死の病に罹った患者が、静かに人生最後の時間を過ごす場所。
娘は、その病院の看護師でした。
院長に許しを請い、死神はレオという名前を授かりました。

私も実家で犬を飼っていたことがありますが、2代目の犬が、ゴールデンの親戚、ラブラドールレトリバーで、名前がレオだったので、親しみが持てました。

レオの仕事

レオという名前になった死神は、仕事に取り掛かります。
この病院での上司から指示は、4人の霊を、呪縛霊にならないよう、天国に送り出すことでした。
呪縛霊とは、この世に未練を残しながら死んでいく人たちの霊のことで、たいてい、殺されたり、事故にあったり、突然の死が訪れた人の霊がなりやすいそうです。(本文より)
最初の患者は、高齢の男性で、すぐにレオを見ると、戦時中の想い出話を語り始めました。
元刑事という老人は、生涯独身で過ごしました。
空襲で思い人を亡くし、その女性を守れなったという後悔に苦しんでいました。
この老人の思い人は、戦前、この病院の前進であったお屋敷に住むお嬢様だったのです。

曰く付きの館

次の仕事は、香港などで手広く商いをしていた中年男性でした。
この街で、親の代から宝石商を営んでいましたが、不況で宝石が売れなくなったところ、詐欺集団に目をつけられ、人生が暗転します。
そんな折、この屋敷が、若い富豪夫婦と幼い息子がいる家族が買ったという噂を聞きつけます。
この家族は、夏も冬もいつもサングラスにマスクをかけていたので、街では吸血鬼一家とウワサされていました。
行動するのは、いつも夜です。
そんな折、宝石商のところへ、サングラス親子がやってきました。
店を閉めようとした夜のことです。
幼い息子が、大きなカットガラスを差し出しました。
父親が、鑑定をお願いしてきたので、鑑定したところ、本物の大粒のダイヤモンドだったのです。
宝石商は、借金に追われる身であったので、この屋敷に入って、盗みの計画を立てました。
しかし、実行に移した夜、先を越されていました……

お屋敷親子の芸術センス

レオの仕事の3人目は、若き画家でした。
美大を卒業後、コンクールで入賞して、地元の画廊では、そこそこの値段で売れるような画家に成長していました。
30代前半で、ガンに侵され、突然、絵が描けなくなったのです。
この青年の無念は、自身が描いた絵を、この屋敷に住む親子が邪険に扱ったこと。
そして、何の因縁か、医師にホスピスを勧められたら、サングラス親子が住んでいた屋敷跡の、この病院だったわけです。
サングラス親子は、7年前に強盗に殺されていました。
しかし、先ほどの宝石商が犯人ではなさそうです……
この青年と、サングラス親子に、どんないきさつがあったのでしょうか?

4人目の仕事は

レオは、4人目の患者を探しますが、見つけられていませんでした。
この小さな病院は、スタッフを入れても、10名弱の人数です。
レオは、苦手な院長室がある3階まで行ってみました。
すると、ある部屋から、かすかな死臭がします。
中へ入ると、若い女性の部屋のようでした。
それは、レオを寒い夜、助けてくれた看護師のナオでした。
いつもそばにいすぎて、レオはわからなかったのです。

ナオの病気は? 余命どれぐらいなのでしょう?

殺人犯が忍び寄る

古い屋敷跡の病院は、維持費もかかり、経営難に陥っていました。
時々、不動産会社の中年男が、執拗に訪ねてきます。
ナオは、レオを連れて、街に出て、男からもらった名刺をたよりに、会社に踏み込みます。
しかし、偽名であったようで、男は、不動産会社の者ではありませんでした。
2番目の患者、宝石商が、何かを思い出します。
以前の屋敷の所有者、サングラス親子の殺人事件にも関与するのでしょうか?
宝石商の話では、この屋敷には、大粒のダイヤモンドが、いくつも眠っている可能性があります……
やがて、殺人者が踏み込んできて、病院は戦場と化します、

さいごに

知念実希人氏の作品には、必ず、主人公の絶体絶命のシーンがあり、ハラハラします。
それがスリル満点で、読書(耳読)とは思えないほどの迫力!
ファンタジーっぽいのに、現実にありそうな話に思えてしまうのも、作家さんの筆力ですね。
読み応え(聴き応え)ある、ミステリー&ヒューマンドラマ小説をぜひ!